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2010年2月13日 (土)

KSLV-1(ナロ号)のフェアリング分離失敗の原因は電気系?機械系?or 気圧系?

昨年、衛星を軌道に投入することに失敗した韓国のKSLV-1(ナロ号)の調査報告に関する記事がいくつかあったので、拾い読みしてみました。

◎KBS WORLD
ナロ号の失敗原因発表 5月にも再発射 
2010-02-09
http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_Sc_detail.htm?No=35981

あまり詳しく書いてありません。

◎朝鮮日報 chosun Online
記事入力 : 2010/02/09 10:38:16
羅老号:「失敗の原因は電気・分離装置の欠陥」
教育科学技術部の最終調査、原因究明は不十分
早ければ今年5月に2度目の打ち上げ
http://www.chosunonline.com/news/20100209000033

以下抜粋引用
**********引用開始**********
 教育科学技術部(教科部)は8日、羅老号発射調査委員会の最終調査結果を発表し、「羅老号が軌道進入に失敗した直接的原因となったフェアリング(衛星保護用カバー)未分離は、電気配線や機械の欠陥によって引き起こされた現象とみられる」と語った。しかし調査委は、それ以上の詳細な原因については究明できなかった。
 (中略)
 調査委のイ・イン委員長は、「フェアリング分離の際、内部の気圧が当初の予想より1万倍以上高かった。気圧が予想と違ったため、電気信号が放電してしまった可能性がある」と語った。
**********引用終了**********

「電気配線や機械の欠陥」についてはなんとなく理解できますが、「気圧が予想と違ったため、電気信号が放電」が判りません。

他のニュースソースも探して見ました。

◎聯合ニュース YONHAP NEWS
 2010/02/08 16:10 KST
「羅老」失敗原因、放電または分離装置の不具合
http://japanese.yonhapnews.co.kr/itscience/2010/02/08/0600000000AJP20100208002500882.HTML

気圧に関する記載はありませんが、電気配線装置について以下のような記載がありました。

以下抜粋引用
**********引用開始**********
 このため、フェアリング分離命令後、フェアリング分離駆動装置からフェアリング分離装置に高電圧電流が供給される過程で電気配線装置に放電が発生し、分離火薬が216秒で爆発しなかった可能性があると分析された。
**********引用終了**********

「高電圧電流」と「放電」が一寸気になります。この「放電」が電池の自己放電や配線間の漏電を意味するのか、配線間の短絡を意味するのか、あるいは、絶縁破壊によるスパークを意味するのかが良くわかりません。もし後者だとするとプライマに相当に高い電圧を印加する設計になっているのでしょうか?
朝鮮日報の記事と併せて考えると、気圧が高かったので放電したということでしょうか? 良くわかりません。

◎DAUM
절반만 연 하늘門, 이번엔 활짝 연다
半分開いた空门、この時間を大きく開ける(Googleによる翻訳)
入力2010.02.10 13:05
http://media.daum.net/digital/game/view.html?cateid=1008&newsid=20100210130510382&fid=20100210130510382&lid=20100210120402600
( Googleによる翻訳)
http://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=ko&u=http://media.daum.net/digital/game/view.html%3Fcateid%3D1008%26newsid%3D20100210130510382%26fid%3D20100210130510382%26lid%3D20100210120402600&ei=7pZ0S-qxMpPi7APp2LmgCA&sa=X&oi=translate&ct=result&resnum=11&ved=0CFUQ7gEwCg&prev=/search%3Fq%3D%2522kslv%2B1%2522%26hl%3Dja%26lr%3Dlang_ko%26rlz%3D1T4GZEZ_jaJP235JP236%26sa%3DG%26tbo%3Dp%26tbs%3Dqdr:w

機械翻訳なので意味が不明な部分が多数ありますが、最後の方に具体的改善策が書いてあります。

◎KoreaTimes
02-08-2010 20:12      
Rocket Failure Remains Mystery
http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2010/02/133_60524.html

以下抜粋引用
**********引用開始**********
``The flaw in the wiring of the fairing separation drive unit (FSDU) may have caused the discharge. Another possibility is that a flaw in the mechanical structure may have jammed the `near' fairing and prevented it from separating from the launcher, despite the explosives going off on time.''
**********引用終了**********

flawが、傷、ひび、割れ目という意味であれば、高電圧による放電(discharge)というストーリーである程度納得できますが、単に想像に過ぎません。もし、flawが、欠点、弱点という広い意味で使用されてているのであれば、話は別になります。

◎한국일보 > 뉴스 > 경제
韓国日報 " ニュース " 経済 (Googleによる翻訳)
"나로호 5~6월에 2차발사" "
ナロホ5〜6月2チャバルサ"(Googleによる翻訳)
조사위 "1차 실패는 위성덮개 분리 오작동·방전"
調査委、"1回の失敗は、衛星のカバーの取り外しの不具合放電" (Googleによる翻訳)
http://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=ko&u=http://news.hankooki.com/lpage/economy/201002/h20100208220142111720.htm&ei=JIh2S52DII3c7AO97ZWeCg&sa=X&oi=translate&ct=result&resnum=3&ved=0CEQQ7gEwAg&prev=/search%3Fq%3D%25EA%25B8%25B0%25EC%2595%2595%2BKSLV%26hl%3Dja%26lr%3D%26rlz%3D1T4ADBF_jaJP293JP294%26sa%3DG%26tbo%3Dp%26tbs%3Dqdr:m

機械翻訳なので判りにくいですが、説明が一番詳しいように思われます。
朝鮮日報の記事に書かれていた「フェアリング分離の際、内部の気圧が当初の予想より1万倍以上高かった」の意味が判りませんでしたが、この記事では、以下のようになっています。
http://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=ko&u=http://news.hankooki.com/lpage/economy/201002/h20100208220142111720.htm&ei=JIh2S52DII3c7AO97ZWeCg&sa=X&oi=translate&ct=result&resnum=3&ved=0CEQQ7gEwAg&prev=/search%3Fq%3D%25EA%25B8%25B0%25EC%2595%2595%2BKSLV%26hl%3Dja%26lr%3D%26rlz%3D1T4ADBF_jaJP293JP294%26sa%3DG%26tbo%3Dp%26tbs%3Dqdr:m

以下Google翻訳の抜粋引用
**********引用開始**********
216秒のときナロホウイの高さは177km。
韓国航空宇宙研究院ジョグァンレ発射体の研究本部長は"この高さからペアリングがあったナロホの上部(2段)内部の気圧を1万分の1トール(torr ㆍ 760torr = 1気圧)に期待し、打ち上げ前の性能試験を実施した"と述べた。
しかし、実際の状況で、気圧は1〜3トールだった。予想よりも気圧が高い状態で放電現象が起こり、このため、電流が2つのペアリングに均等に供給されず、片方が落としていない可能だろうというのが、調査委の推定である。
**********引用終了**********

この説明であれば、ストーリーの流れがかなり良くなりますが、依然よく判らない部分があります。
下記の資料によれば、地表で約1013hPa(760Torr),高度120kmで約0.00001hPa(0.0000075Torr)となっています。1Torrは高度約50kmに相当します。

大気の鉛直構造
http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~cont1/kou_rika/data/sido/s35.pdf

確かに1トール(1.3hPa)は1万分の1トール(0.00013hPa)の1万倍ですが、大気圧(760トール,1013hPa)に比べれば桁違いに低いので、大気の影響は考えにくいように思われますです。
また、下のフェアリング分離試験の動画を見ると、真空チャンバではなく大気中で試験しているようなので、空気抵抗が大きい大気中の試験で問題がなければ、気圧が低い状態であれば少なくともフェアリング分離時の空気抵抗に起因する問題は少ないように思われます。
気圧が低くなって問題になりそうなのは、絶縁材に含まれていた非常に小さな気泡が膨張して破裂し、絶縁不良になること位しか思いつきませんが、使用する部品は当然真空中での性能を確認済みと思われるので、この可能性もないかもしれません。
気圧が低くなって問題になりそうな他の要因として、放電し易くなることがありますが、今回の場合は、「気圧が高い状態で放電現象が起こり」ということなので状況が合いません。
気圧が高くなるとなぜ放電現象が起きるのかよく判りません。放電は、低圧の気体中ではより低い電位差でおこるとされています(http://ja.wikipedia.org/wiki/放電)。

また、気圧が予想よりも高くなった原因がよくわかりません。全くの素人考えですが、下のフェアリング分離試験の動画を見ると、ボルトが爆発したときに発生したと思われる煙がフェアリングの内側に溜まっていたように見えます。もしかしたら、爆圧が内側に抜ける設計?

【KSLV-1のフェアリング分離試験の動画】
(再生にかなり時間を要する場合があります)
登録日:2008.04.03(23:30)
http://www.tagstory.com/video/video_post.aspx?media_id=V000178870

【参考外部リンク】
robot.watch.impress
JAXA、H-IIBロケットフェアリング分離試験を公開
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090818_309115.html

H-IIBロケット試験機の準備状況について
5.フェアリング分離放てき試験概要
http://www.jaxa.jp/press/2009/08/20090819_sac_h2b.pdf

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