地下鉄走行中にPHS(ウィルコム)の電界強度を測定してみました
以前、福岡の地下鉄でトンネル内走行中に携帯電話で通話している人がいるのを見て一寸びっくりしたことがあるのですが、ネットで地下鉄走行中の電話の使用について調べていたら、東京都内でも副都心線ならウィルコムは駅間もカバーしているという記事を見かけました。
もし本当に地下鉄の走行中に通信(ウェブ、メール等)ができるのであれば、この点をセールスポイントにすれば、現用の携帯に追加してサブ用あるいはバックアップ用として使用することを考える人もいるのではないかと思います。
自分もDDIポケットの時代から実験用(タダベル、電測等)兼バックアップ用としてNTTパーソナルと共に結構長い間PHSを契約していましたが、遊べる要素が少なくなってしまったので解約してしまいました。
万一事故などで車内に長時間閉じ込めらたような場合には、トンネル内から外部に連絡できるのは非常に心強いと思います。
また、特にPHSであれば空中線電力が携帯電話に比べて桁違いに小さいので、電磁波の影響を殆ど心配することなく使用することができると思われます。
下の方のasahi.comの記事には、ウィルコムに対する支援について、”電磁波の弱いPHSは特に医療機関や救急医療の現場で活用されている。機構はこうした「公益性」を考慮したようだ。 ”と書かれています。
今まで、都内の地下鉄走行中の携帯電話による通信(ウェブ、メール等)に関する情報は、殆ど見かけたことがなかったので、実際はどのようになっているのかをチェックしてみることにしました。
ところが残念ながら現在ウィルコムと契約している端末はありません。どうにかしてお金を掛けずにPHSの信号を検出する方法はないか考えてみました。
Wikipediaによれば、公衆制御キャリアの周波数は現在は1915.85 - 1918.25 MHz ということなので、手元にあるIC-R3で直接信号を受信することも考えました。
【IC-R3】
しかし、実際に自宅でスキャンしてみると、何かのキャリアかスプリアスのようなものは受信できするのですが、PHSの信号であるかどうかは判りません。地下鉄内に持ち込んでも、多分何を受信しているのか判らなくなることが予想されるので、この案は却下です。なお、自宅がPHSの圏内であることは、以前契約していたときに確認済みです。
次に、昔購入したPHSのデータカードMC-P200を利用することを考えました。既に解約済みですが、どこかで解約済みの端末でも電測は可能であるというような記事を見た記憶があったので、早速試してみました。
PC(ThinkPad X40, Windows XP)にドライバをインストールしてカードを挿すと取敢えず正常に認識してくれました。
【MC-P200】
次に、MC-P200のコマンドリファレンスガイドが参照して、ATコマンドが通るかどうか試してしました。
結果は以下の通りです。(応答のOKと空白行は削除しました)
ati1
PHS LINK 64
ati2
PHS
ati3
Seiko Instruments Inc.
ati4
MC-P200
ati5
Version 1.40
ati6
070********
ATコマンドは無事に通りました。
端末の電話番号が残っているということは灰ROMということでしょうか?
次に、自宅で電測コマンドを試して見ました。
結果は以下の通りです。
at@k
8188********,44
8188********,43
8188********,40
8188********,31
8188********,31
at@k10
8188********,48
8188********,42
8188********,41
8188********,32
8188********,32
8188********,30
8188********,30
8188********,22
8188********,21
8188********,20
CSIDと信号レベルらしき数字が表示されるので、電測コマンドも無事に通るようです。
ついでに、発呼コマンドも入力してみました。
atd117
NO CARRIER
当然接続はできませんが、データカードからは一瞬電波が送信されるようです。
秋月で買った電磁波検出用ボールペンのランプが短時間光ります。
【発呼中?】
ここまでで、やっと準備作業が終了です。
実際に地下鉄走行中に電測することを考えると、キーボードからat@k10を繰り返して入力するのは手間が掛かるし、電測結果が表示されても電測した位置との対応がわかりません。
そこで電測作業を自動化することを考えました。
昔、パソコン通信の時代に自動的にキー入力を自動巡回ソフトがあったので、これを利用すれば簡単と思っていたのですが、現時点では、マクロを使うことができる無料のターミナルソフトがあまりないようです。色々調べてみるとTera Termというターミナルエミュレーターが目的に合っているようなので、これを使うことにしました。
電測コマンドの入力は、これでどうにかなりそうですが、電測位置との対応をどのようにするかが問題です。
地上であれば、GPSで測位した座標と電測結果を一緒に撮影するという方法も考えられますが、地下鉄ではこの手は使えません。
最終的には、電測した時刻を伝測結果と一緒にPCに記録し、これに並行して各駅の発着時刻を紙のメモに記録して後で照合することにしました。
ところが電測した時刻を記録するといっても、具体的どのようにすればよいのか判りません。これも色々と調べた結果、以下のTera Termのマクロでどうにか実現できることがわかりました。
while 1
sendln 'AT@K10'
sendln
pause 10
gettime timestr
send timestr
endwhile
AT@K10を入力し、10秒待機し、時刻を取得し、時刻を入力する、という動作を繰り返します。
実際の測定結果は以下の通りです。
測定区間:東京メトロ副都心線各駅停車(渋谷駅ー池袋駅)
測定場所:最後尾車両左側中央部付近のシートに着座。PCは膝の上。
各駅発着時刻:
渋谷駅 16:21:19発
明治神宮前駅 16:23:00着 16:23:37発
北参道駅 16:25:15着 16:25:45発
新宿三丁目駅 16:28:00着 16:28:50発
東新宿駅 16:30:40着 16:33:59発
西早稲田駅 16:35:43着 16:36:17発
雑司が谷駅 16:38:09着 16:38:39発
池袋駅 16:40:00着
渋谷駅→明治神宮前駅
渋谷駅では10個のCSIDが検出され、明治神宮前駅では5個のCSIDが検出されました。
各電測点で最高レベルとなった渋谷駅と明治神宮前駅には、それぞれ異なった色(4色)をつけてあります。
電波の強さを示すと思われる数値の変化を見ると、赤色のCSは渋谷駅から離れるに従って低くなり、青色のCSは明治神宮前駅に近づくのに従って高くなっています。
また、オレンジ色のCSはトンネルの途中で最高になっているので駅間にCSが配置されているのかもしれません。
【渋谷駅→明治神宮前駅の電界強度変化】
(画像クリックで拡大)
【渋谷駅→池袋駅の電界強度変化】
(画像クリックで拡大)
測定結果をみる限りでは、トンネル内でもかなり電波が受信できているようですが、実際に通話や通信が可能かどうかは未確認です。
昔のGIGAZINEの記事を見ると、ウィルコムは前向きなコメントなので、それが部分的に実現しているのかもしれません。
【関連外部リンク】
GIGAZINE
2007年11月18日 00時40分00秒
地下鉄のトンネルで携帯電話やPHSを使える日は来るのかを各社に聞いた
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071118_mobile_subway/
asahi.com
ウィルコム、18日にも会社更生法申請 再生機構支援へ
2010年2月17日3時6分
http://www.asahi.com/business/update/0216/TKY201002160554.html
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