防災無線聴取困難改善私案
今日(6月1日)は電波の日ということで、電波(無線)ネタを一つ。
今までは防災行政無線についてはあまり関心がありませんでしたが、今回の地震及びその後の計画停電の発生で認識を改めました。
しかしながら、防災無線の屋外拡声子局の拡声器からの放送は非常に聞きにくく、必要な情報を得ることが困難なことが多いです。
コミュニティ放送でも災害情報を流しているという話を聞きましたが、通常受信していないので周波数も分かりません。また、周波数を走査して見つけようとしても、関東地方の場合、受信可能な多数のFM局があるので、放送内容から判断して短時間で目的局を見つけるのがなかなか難しいです。
現在の防災行政無線では各戸への情報伝達に問題があるので、これに対する改善案(*1,*2)が色々検討されているようです
例示されているモデルシステム(*1 p13(14/27)
ア 無線LANを利用した各戸への情報伝達システム
イ 特定小電力無線局を利用した各戸への情報伝達システム
ウ アナログ方式の戸別受信機を活用した各戸への情報伝達システム
いずれのシステムも家庭で新たに専用の受信装置を用意する必要があり、また簡単に入手するのは難しそうです。
そこで、素人考えではありますが、以下のようなシステムを考えてみました。
簡単にいうと、今後空きチャンネルになるTVのローバンドの一部を使って防災無線を再送信し、家庭のFMラジオで受信できるようにするというものです。
(1)使用受信機:TVのローバンド(1ch,2ch,3ch)が受信可能なポータブルFMラジオ。
デジタル選局(プリセット式)が望ましいですが、アナログ選局でも実用になると思います。
現時点では、この種のラジオは量販店などで安く大量に売られているので、入手は容易だと思います。
(2)使用周波数:TVのローバンド(1ch,2ch,3ch)の音声搬送周波数である95.75MHz,101.75MHz,107.75MHzのどれか、あるいは全部(放送エリアを分割する場合等)。
アナログTV停波後(*3,*4)は、TVのローバンド90~108MHzは、デジタルラジオ等で使用されるようですが、FM放送の占有占有周波数帯幅は±100KHzなので、防災用に3局分使用したとしても影響は少ないように思われます。
(3)送信装置:屋外拡声子局の拡声器からの音声放送を補完する場合であれば、1W以下でも十分であると思われます。
信号の流れは、防災無線の受信→復調(検波)ーここまでは既存設備ー→復調出力で搬送波を周波数変調→送信 となります。
なお、装置としては、現在コミュニティ放送(空中線電力20W以下)(*5)で使用されている送信機を流用できると思われます。
利点
・受信側の負担コストが安く入手も容易。もし既に手元にTVのローバンド受信可能なFMラジオがあれば新たな出費なし。
・送信側のインフラもデジタルに比べてローコスト。
・本来であれば、完全地デジ化以降は販売しにくい(販売できない?)TVのローバンド受信可能なFMラジオの販売を継続できる。(必要であれば、現在のTV ch1,ch2,ch3の表示をたとえば防災ch1,ch2,ch3に変更する )
・60MHzに比べてEスポの影響を受けにくい。
・中波に比べてアンテナの設置が容易で雑音の影響も受けにくい。
課題
・周波数が割り当てられなければ、話が始まりません。
・各屋外拡声子局ごとに無線局の免許が必要になるので手続きが面倒ですが、電波法の改正で「免許を要しない無線局の拡大」があるようなので、これが適用されれば簡単になるかもしれません。(1Wもあれば十分)
・FM放送用のポータブルラジオはそれほど感度が高くないので、室内での受信が難しいかもしれません。(送信電力との兼ね合いになりますが・・)
・安価なFMラジオには、スケルチ(ミューティング)が付いていないので、無信号時の雑音がうるさいです。緊急時には、常時搬送波を出してもらえれば、雑音防止とサービスエリア確認の効果があると思います。
・新たに割当てられると思われるデジタルラジオ等の信号が雑音として聞こえる。
・市販のFMラジオの品質の差が激しいので、専用受信機に比べて信頼性が低い。
・音声のみの放送に200kHzも占有するのは勿体ないですが、ワイドFMの放送局に対応した既存のFMラジオを流用するので、やむ得えません。なお、FM放送の最大周波数偏移は±75kHzですがTVの音声は±25kHzなので、TV音声の規格に合わせれば、それほど検波出力の低下させずに占有周波数帯幅をもっと狭くすることができるかもしれません。
余談ですが、米国では通常の放送波(中波AM)を使用したCONELRAD(*6)と呼ばれる緊急放送システムがあったようです。
大昔のラジオのダイヤルには△のマークがついていたので、何の意味かと思ったことがありますが、これは"CD Mark"と呼ばれるもので、CONELRAD用の周波数を表示していたものだそうです。
wikipediaによれば、米国のアマチュア無線局は、通常の放送局のオンエア状態を定期的にチェックして、停波していた場合には、送信を停止しなければならない時代があったようです。
【関連外部リンク】
[*1]
防災行政無線の各戸への情報伝達に関する検討結果報告書概要
平成20年3月25日
www.soumu.go.jp/soutsu/kinki/studygroup/2007/bousai/houkokusyo.pdf
[*2]
音声アシスト用無線規格を用いた災害時用小電力FM放送の検討
http://www.ee.kagu.tus.ac.jp/lab/mrgl/pdf/b_05_178.pdf
[*3]
情報通信審議会 情報通信技術分科会
電波有効利用方策委員会報告
平成19(2007)年6 月27 日
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/bunkakai/pdf/070627_1_1-2-1.pdf
[*4]
WBB FORUM
活発化する電波/周波数の割り当て(7):地上テレビ放送のデジタル化後の電波の跡地利用
2007-10-04
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20071004/469
[*5]
コミュニティ放送
http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/system/bc/commu/index.htm
[*6]
CONELRAD
http://en.wikipedia.org/wiki/CONELRAD
"CD Mark" symbols like this (though generally shown as simple white triangles) were on every radio sold in the U.S., at the 640 kHz and 1240 kHz frequency points, to help listeners find the CONELRAD stations
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