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2011年7月 1日 (金)

「球体循環装置」の特許公報には「永久」という文字はありませんでした

 一寸旧聞になりますが、msn産経ニュースの[科学]ニュースの欄に、下記の記事が5ページを使って掲載されていました。

記者も感激! さいたま市の80歳男性が発明した「夢のエネルギー製造装置」に迫る
2011.6.26 12:00 (1/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110626/scn11062612000001-n1.htm

 キャプションだけ見ると永久機関でも完成したのかと思ってしまいました。
  記事の内容を見ると特許になっているようです。
 確か、永久機関は特許法における「発明」には該当しない筈ですが・・・

 
 特許法では、以下のようになっています。

第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO121.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000200000000000000000000000000000

 これだけだと永久機関との関係がよく分かりませんが、特許庁のHP(http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)を見ると、「発明」に該当しないものの類型の説明があります。

特許・実用新案審査基準
・審査基準ハイパーテキスト(HTML)版
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun/part2chap1.html

*****以下抜粋引用*****
1.1 「発明」に該当しないものの類型)
 以下の類型のものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない。

(3) 自然法則に反するもの
 発明を特定するための事項の少なくとも一部に、熱力学第二法則などの自然法則に反する手段(例:いわゆる「永久機関」)が利用されているときは、請求項に係る発明は「発明」に該当しない。(実例1参照)
**********************

 msn産経ニュースの記事の中に発明の名称が「球体循環装置」と書いてあったので、特許電子図書館(IPDL:http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)で検索してみました。
Jp4608598_front_page
 特許第4608598号がそれっぽいです。
 登録になっているということは永久機関ではないということですね。
 特許公報を読んでみましたが、「永久」という用語は1回も出てきません。
 代理人(弁理士)による出願なので、多分明細書作成時に注意深く排除したのではないかと思われます。
 
 技術的内容については、ネット上で色々説明がありますが、超ラフに要約するとピタゴラスイッチ的水力発電装置(水を供給 → 色々なステップ → 発電)のようです。
 明細書と意見書にも「水を補給するだけで、球体の循環が維持され」と書いてあります。
 
 特許公報に記載の要約は以下のようになっています。

【要約】
【課題】本発明は、装置内で落下及び上昇を繰り返して循環する複数の球体に係る落下運動エネルギーを取り出すことができる球体循環装置に関する。
【解決手段】球体循環装置は、蓄水室a、少なくとも2つの上方向開閉弁を介して分離した上昇室b1、b2、b3、排水口12を有する落下室cを備え、高い水位の第1の水面が上昇室b1の上端開口に、低い水位の第2の水面が落下室cの下端開口に夫々形成される。水位が低下した第1の水面は、自動給水装置17から給水されて維持される。挿入口15から挿入された複数の球体の各々は、落下室c内を落下し、第2の水面に突入する。各球体は、誘導されて第1の水面に向け、上昇室b3~b1内を浮力で上昇する。第1の水面に到達した複数の球体の浮力で、一球体が第1の水面を越え、落下室c内を第2の水面に向けて落下する。球体の落下と上昇とが繰り返され、複数の球体の各々が装置内で循環する。
【選択図】図5
Jp4608598_fig5

 動作原理は大体分かりましたが、蓄水室の技術的意義がよく分かりません。上の説明から判断すると蓄水室が無くても動作するような気が・・・・・。
 
 記事の中では、自転車用くらいのライト(白熱灯?LED?))が微弱に光っていると書いてあるので、発電するのは間違いないのでしょうが、水で直接水車を回した時の発電力との比較が知りたいです。
 また、計算ではこの装置で生み出される電力は1ワットにも満たないとのことですが、何を計算したのか一寸知りたいです。運動エネルギーから電気エネルギーへの変換? 素人考えでは、直流発電機であればライトに供給される電圧と電流をテスタで測定すれば消費電力は簡単に分かるような気がします。あるいは熱電対方式の終端型電力計を使用すれば、直流・交流に無関係に簡単に発電機の出力を測定できそうな気がします(終端型電力計は送信機の空中線電力の測定に使用したことはありますが、実際に直流出力を測定したことはありません)。
 入力と出力を数値で比較しないと説得力が無いような気がします。(「数字でものを言え」?)
 もし水で水車を直接駆動するよりも能率が高いのであれば、高能率の水力発電機として意味があるのかもしれません。

 本発明のポイントは、浮力による上昇と重力による落下の組み合わせにあると思われますが、国際特許分類にはこれに関係がありそうな分類としてF03G3/00があります。この特許第4608598号もこの分類が付与されています。

 特許庁のパテントマップガイダンス(PMGS)(http://www5.ipdl.inpit.go.jp/pmgs1/pmgs1/pmgs)で調べてみると以下のようになっています。

F03G3/00の「IPC」をターゲット表示
http://www5.ipdl.inpit.go.jp/pmgs1/pmgs1/!frame?hs=2&gb=8&dep=5&sec=F&cls=03&scls=G&mgrp=3&idx=/&sgrp=00&sf=&bs=&dt=0&date=20110629&wrd=&nm=00
 
・F03G  ばね,重力,慣性または同様な原動機;機械的動力を生み出す装置または機構であって,他類に属しないものまたは他類に属しないエネルギ源を用いるもの(車両における自然力からの動力供給に関する配置B60K16/00;車両における自然力からの動力供給による電気的推進B60L8/00) 
・3/00  (2006.01) 他の原動機,例.重力または慣性による原動機   
  ・3/02  (2006.01) ・中実の落下体と協動し,周囲に配備された区画室をもつ車輪を用いるもの(3/04が優先) 
  ・3/04  (2006.01) ・砂または類似の流動する固体物質により駆動されるもの   
  ・3/06  (2006.01) ・振子を用いるもの   
  ・3/08  (2006.01) ・はずみ車を用いるもの   

 なにかそれらしい雰囲気がしますが、この分類は永久機関専用というわけではなく、真っ当な技術も含まれています。

 この種の特許は、特許法第一条の趣旨から考えると、一寸「?」の気がしないでもありませんが、世の中の大勢に影響が無い(困る人がいない)ような場合には登録することもあるという噂を聞いたことがありますが、真偽は不明です。
 登録になれば、出願人(発明者)はもちろん喜ぶし、特許事務所(代理人、弁理士)には成功報酬(成功謝金)が入るし(無い場合もあるようですが・・・)、特許庁(国)には結構な額の特許料(特許維持年金)が入るので、三者ハッピー?

【参考外部リンク】
永久機関
http://ja.wikipedia.org/wiki/永久機関

特許電子図書館の利用の方法
http://www.ipdl.inpit.go.jp/Howto/howto.htm

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