ADS-B(1090MHz)用簡易テスト信号発生器を検討中
趣味でADS-Bの信号(1090MHz)を受信して遊んでいます。
現在使っているアンテナは、目の前に建物がある2Fのベランダのエアコンの室外機の上に置いた自作の針金細工の3段コリニアアンテナなので、受信環境はあまりよくありません。
羽田空港に離着陸する飛行機は高度が300m以上であればどうにか見えますが、高度が下がると見えません。
自宅の環境では一寸無理ですが、近所の高所(標高約100m)で羽田空港の滑走路上の機影を表示することを目標として、アンテナを色々自作して実験していますが、測定器がないのでアンテナの特性の比較が困難です。
RTL1090とadsbScopeを使用して、それぞれのアンテナで長時間受信したときの受信距離をプロットしたパターンを比較すれば、ある程度判断できますが、リアルタイムでの比較はできません。
アンテナを切り替えながら、RTL1090で受信局数(機体数)をチェックすれば、ほぼリアルタイムで比較できますが、受信状態は数秒単位で変化するので、アンテナAで受信した局数がアンテナBで受信した局数より多いからアンテナAの方が良いとは簡単には判断できません。
ADS-Bの受信状態は、航空機の種類、高度、距離によって大きく異なっており、しかも高速で移動しているので、変化が非常に大きいです。
また、深夜はADS-Bの信号がほとんど受信できないので、比較が可能な時間がかなり制限されます。
航空機からの応答信号の受信強度は大きく変化しますが、地上からの質問信号であれば安定に受信できるかもしれないと思って1030MHzを受信してみましたが、残念ながら当方の場所では受信できませんでした。
残る手段は、1090MHzの微弱信号発生装置を使うこと位しか思いつきませんが、自分で作るのは大変そうです。
1GHz近傍の発振器は一般には売られていないだろうと思ってみたら、それらしいものがありました。
VCOオシレーター 1030-1090MHz
Crystek Corporation CVCO55CL-1030-1090
http://jp.mouser.com/ProductDetail/Crystek-Corporation/CVCO55CL-1030-1090/?qs=xguzDneKu5CBf71ARYBpPA==
データシート
http://www.crystek.com/microwave/admin/webapps/welcome/files/vco/CVCO55CL-1030-1090.pdf
外部回路が判りませんが、制御電圧として 0.5~4.5 Vを供給すれば1030~1090MHzで発振するようです。下限限と上限の周波数がADS-Bの質問信号と応答信号の周波数に対応しています。
価格は、1個で\3,856.5 、500個で\2,159.7と書いてあります。
遊びで一寸買ってみるという価格ではないですし、外付け回路がよく判りません。
ということで、このCVCO55CL-1030-1090は却下です。
他に何か使えそうなものはないかと探していたら、一寸怪しげなワイアレスカメラを見つけました。
出力周波数が900MHz~1200MHzとなっています。
何か細工すればテスト用の信号発生器として使えるような気がします。
しかしながら、出力を見ると数十ミリワットオーダーです。
技適マークがついているとも思えないので、このまま使うと、或いは「無線局の開設」の状態にすると、「お縄頂戴」のレベルです。
周辺に障害が発生してもおかしくないレベルですが、少し調べてみたら関係すると思われる資料がありました。
なお、当方がネット上で見た製品と下記資料に記載の製品との対応は不明です。
総務省
トップ > 組織案内 > 地方支分部局 > 関東総合通信局 > 電波環境 >
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/re/jyubou/
以下、総務省ホームページの上記URLから抜粋引用
(著作権・免責事項について http://www.tele.soumu.go.jp/j/musen/readme/index.htm)
--------------------------------------------
平成25年6月
国土交通省東京航空局東京空港事務所より、羽田空港付近で使用しているDME(航空用無線航行設備)が外来波の影響を受け障害を受けている旨の申告を受け移動監視を実施した結果、羽田空港付近の工事現場で使用しているクレーンに設置されたワイヤレスカメラが障害原因であると特定。工事担当者にカメラの撤去を要請し障害原因を排除した。
--------------------------------------------
総務省総合通信基盤局 電波部監視管理室
2013.6.28
無線設備試買テストの実施について
http://www.aaal.jp/assets/files/2013-01denpahou4.pdf
これらの資料によれば、ワイヤレスカメラからの電波により距離測定装置(DME)に障害が発生したようです。
ワイヤレスカメラの周波数が明記されていないので、基本波が問題なのか高調波が問題なのかはよく判りませんが、「航空用無線(1GHz帯)に対するワイヤレスカメラからの混信」ということなので、ワイヤレスカメラの周波数は1GHz付近の可能性が高いです。
ワイヤレスカメラでどの周波数を使用しているのを知らなかったのですが、調べてみたら色々問題になっているようです。
総務省
平成25年10月15日
発射する電波が「著しく微弱」の範囲を超える無線設備の公表
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban17_02000011.html
テストの結果を見てみました。
無線設備試買テストの結果について
http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/illegal/result/index.htm
電波法に基づく免許等が必要な無線設備
平成25年度掲載分
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/monitoring/illegal/result/siryo001.pdf
平成26年度掲載分(平成27年3月6日更新)
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/monitoring/illegal/result/siryo002.pdf
日本語のタイトルはマイルド(?)な表現になっていますが、URLでは明確に"illegal"となっています。
周波数は不明ですが以下のような事例もあったようです。
外国製の技術基準不適合設備(ベビーモニター)が公共業務用無線局(水道用)に電波妨害
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/if/press/p24/p2404/p240403k2.html
ワイヤレスカメラ関係をざっと見た感じは、平成25年度掲載分は1.0-1.2GHz付近が多いですが、平成26年度掲載分では2.4GHz帯が主流になっているようです。
免許を要しない著しく微弱な電波の無線局の電界強度の上限が35.0μV/mであるのに対して、電界強度の測定値(最大値)が7498942.1μV/mというものもあります。
単純計算では約21万倍(7498942.1/35.0=214255.48)というとんでもない値です。
この計算で合っているのかどうか心配になるような数字です。
周波数は1360.025MHzとなっています。
この周波数帯はFPV(First Person Viewing)でも利用されているようですが、これと関係があるのでしょうか?
getfpv.com
1258, 1280, 1320, 1360MHz Mini 200mW Transmitter (Ex-US)
http://www.getfpv.com/1258-1280-1320-1360mhz-mini-200mw-transmitter-ex-us.html
日本の場合、アマチュア無線の1200MHz帯の範囲は1260~1300MHzなので、工事設計書の作成が一寸面倒そうですが、免許を受ければ合法的に使用できるのかもしれません。
話が横道にそれましたが、上記「電波法に基づく免許等が必要な無線設備」のリストを見ていると周波数が1089.000MHzというものがあります。ADS-Bの周波数に非常に近いです。
電界強度は規定の約5000倍です。
このまま使ったら「お縄頂戴」ですが、改造して出力を低減させればテスト用信号源として利用できるのではないかと思って、探してみたら類似の製品がオンラインショップに沢山あります。
一寸食指が動きましたが、購入して動作確認のために通電した時点で「無線局の開設」の条件を満たしてしまうのかどうか気になります。
弁護士ドットコム
電波法違反 アマチュア無線受
http://www.bengo4.com/hanzai/1091/b_298270/
アンテナを接続しないで、あるいは、ダミーロードを接続して動作させることも考えられますが、「免許を要しない著しく微弱な電波の無線局」の電界強度より弱くなるという保証がありません。
購入したものをそのまま運用する意思はありませんが、出力を低減させた後の電界強度が合法であるかどうかを確認する手段がありません。
素人無銭家は電界強度計などという洒落たものは持っていないし・・・
今までの経験では、「免許を要しない著しく微弱な電波の無線局」の電界強度というのは本当に「著しく微弱」で、せいぜい数m飛べば上出来という印象があります。
別の手段はないかと探してみたら、RTL-SDRチューナの局発(局部発振回路)を送信機として流用するという情報がありました。
OH2FTG Labs
RTL-SDR Transmitter experiments
https://sites.google.com/site/oh2ftg/home/rtl-sdr-transmitter-experiments
rtl-sdr.com
July 9, 2014
RTL-SDR Transmitting at 1270 MHz
http://www.rtl-sdr.com/rtl-sdr-transmitting-1270-mhz/
July 10, 2014
Update to the RTL-SDR Transmitting at 1270 MHz
http://www.rtl-sdr.com/update-rtl-sdr-transmitting-1270-mhz/
詳細は未確認ですが、1270MHzで送信が可能であれば、1090MHz付近での送信も可能であるように思われます。
局発信号であれば、アンプやアンテナを接続しなければ、「著しく微弱な電波の無線局」に含まれると考えてよさそうです。
いまのところ、この局発送信機が問題が少ないようなので、これをもう少し勉強してみるつもりです。
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