SF映画『ライフ(Life)』(2017)を見てきました(一部ネタバレあり)
テレビで映画の紹介をやっていました。
日本人の俳優が出るSF映画のようです。
タイトルが『ライフ』ということですが、BASIC言語の黎明期に流行ったライフゲーム(Game of Life)を連想しました。
The Game of Life
http://web.stanford.edu/~cdebs/GameOfLife/
映画のオフィシャルサイトや予告編を見ると、一寸興味を惹かれます。
映画『ライフ』 | オフィシャルサイト
http://www.life-official.jp/
Life - Watch the First 10 Minutes Now!
今までの経験では、「派手な宣伝≒あまり面白くない」というパターンが少なくないのですが、この映画はどうでしょうか?
エイリアン系の映画のようですが、当方はSFが好きな方なので、重い腰を上げて数ヶ月ぶりに映画館に見に行くことにしました。
映画の内容についは、他の方が沢山書かれていると思いますので、当方の斜視的な印象を一言。
「ワイヤアクションが良かった!」 真田氏の指導のおかげ?
どうも当方は映画を斜めから見る癖がついているようで、枝葉が気になります。
話を面白くするために、敢えて危険な状況を作り出すのは映画のお約束であることは理解できますが・・・
以下、SF好きの素人無銭家の雑感(疑問)です。
◎正規の軌道から弾き飛ばされた探査機と、軌道の制約があるISSが偶然すれ違うとしても、あのような速度差がある状態で、探査機をロボットアームで直接捕獲(ハードキャッチ)することは危険すぎるのでは?
ハイリスク・ハイリターン?
映画の場合は、予定外のミッションだったようですが、事前に分かっていれば、以下のようなネット(捕捉網)を使ったソフトキャッチが可能だっかも・・・
Setting a satellite to catch a satellite
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Engineering_Technology/Clean_Space/Setting_a_satellite_to_catch_a_satellite
◎物理的、科学的、生物的特性が全く不明の未知の生命体とのファーストコンタクトなのに、接触手順があまりにも無防備(雑?)であるような気がします。
当然WHOのバイオセーフティレベル4の実験室バイオセーフティ指針に従っていると思われますが、”two-person rule”に違反しているのでは?
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Laboratory biosafety manual - World Health Organization
http://www.who.int/csr/resources/publications/biosafety/en/Biosafety7.pdf
5. The maximum containment laboratory Biosafety Level 4
Code of practice
The code of practice for Biosafety Level 3 applies except where modified as follows:
1. The two-person rule should apply, whereby no individual ever works alone. This is particularly important if working in a Biosafety Level 4 suit facility.
------------------------------------------------------
実験室バイオセーフティ指針 - World Health Organization
http://www.who.int/csr/resources/publications/biosafety/Biosafety3_j.pdf
5.高度封じ込め実験室(Maximum Containment Laboratory) ―バイオセーフティレベル4
作業原則
下記の変更部分を除き、バイオセーフティレベル3における操作原則を適用する:
1.作業は必ず2人で行い、個々人が単独で実験室の作業を行ってはならない。このことは、バイオセーフティレベル4宇宙服施設で作業をする場合には、特に重要である。
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Biosafety level - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Biosafety_level
地球ではなくISSで地球外生命体を研究するのは、万一の場合はISSを処分すれば良いということなのかもしれませんが、設備が不十分なような気がします。
小説「アンドロメダ病原体(The Andromeda Strain)」に出てきたWildfire Laboratoryのような自動起動型自爆装置付きの施設が必要では?
The Andromeda Strain
https://www.amazon.com/Andromeda-Strain-Michael-Crichton/dp/0345378482#reader_0345378482
◎カルビンが凶暴になった理由がよく判りません。
電気ショック(電パチ?)が気にいらなかった?
モルモットのような扱いに自尊心が傷つけられた?
見方によっては、AEDによる蘇生処置のようなものなので、感謝されていいかも・・
カルビンが自己の生命の維持と成長を希望するのであれば、何もせずに地球に搬送してもらって、たっぷり栄養をもらったほうが、効率がいいような気が・・・・
◎カルビンに冷媒(coolant)を吸い取られて(摂取されて?)液冷式の送信機が焼けて故障しますが、普通はフローセンサで冷媒の移動を検出したり、温度センサで過熱を検出することにより、故障する前に送信機の電源をシャットダウンするので、外から目視で判断できる程に焼けることはないような気がします。
通信系統は複数存在する筈だし、冷媒を使用しない送信機もある筈なので、通信系統が全滅というのはあまり考えられません。
この映画の設定年代がよく判りませんが、そのときにも未だアマチュア無線(絶滅危惧趣味?)という制度が残っていれば、ARISS用に144MHzや430MHzのトランシーバを積んでいる可能性が高いと思います。
Contact the ISS - ARISS
http://www.ariss.org/contact-the-iss.html
ARISS Japan
http://www.jarl.org/ariss/
ISS Frequencies
https://www.issfanclub.com/frequencies
市販のアマチュア無線用のトランシーバの場合は、普通は液冷は考えられないので、冷媒の問題は発生しません。
ISS内は無重量なので、対流による自然冷却は難しいかもしれませんが、放射冷却かファンによる強制通風は可能だと思います
好奇心でISSの冷却システムを調べてみたら、結構大がかりです。
International Space Station's Cooling System: How It Works (Infographic)
By Karl Tate, SPACE.com Infographics Artist | May 9, 2013 07:58pm ET
https://www.space.com/21059-space-station-cooling-system-explained-infographic.html
使用されている冷媒(水、アンモニア等)を抜かれたら、すぐに全滅?
◎カルビンが冷媒を摂取(吸引?)したのは好物だったからなのか、あるいは、通信妨害を意図したものなのかはよく分かりませんが、もし後者であるとすると、全体の通信システムと送信機の構造を理解していることになります。
しかし、映画を見ている限りでは、そのような学習をする機会があったようには思えません。
目の前に自分の生命の維持に役立ちそうなものがある場合には、本能的に成功する確率が高い方法で行動して摂取するということはあるのかもしれませんが・・・
◎スラスタの温度センサの表示装置が、ムービングコイル型のアナログメータなのはなぜでしょうか?
最初は、NAGRAのVUメータを流用したのかと思ってしまいました。
◎映画の内容から判断すると、地球外生物の捕獲(回収)が本来の(隠された?)ミッションのような気がしますが、危険なのでISSを処分するという(地球側の)判断は誰がしたのでしょうか? 国連?
妙なところに気を取られて、映画を十分楽しめなかったのが一寸残念です。
【蛇足】
危険なETを発見した場合には国連に通報する義務があるかも・・・
United Nations Treaties and Principles On Outer Space - unoosa
http://www.unoosa.org/pdf/publications/ST_SPACE_061Rev01E.pdf
Article V(抜粋)
States Parties to the Treaty shall immediately inform the other States Parties to the Treaty or the Secretary-General of the United Nations of any phenomena they
discover in outer space, including the Moon and other celestial bodies, which could constitute a danger to the life or health of astronauts.
月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約
(1966年12月13日採択、第21会期国際連合総会決議2222号、1967年10月10日発効)
http://www.jaxa.jp/library/space_law/chapter_1/1-2-2-5_j.html
第5条 (抜粋)
条約の当事国は、宇宙飛行士の生命又は健康に危険となるおそれのある現象を、月その他の天体を含む宇宙空間において発見したときは、直ちに、これを条約の他の当事国又は国際連合事務総長に通報するものとする。
【余談】
こんな細菌もいるようです。
朝日新聞デジタル
どうやって生きてるのか…「常識外れ」の細菌、泉で発見
2017年7月21日23時27分
http://www.asahi.com/articles/ASK7P4JTGK7PUBQU014.html?iref=comtop_8_05
The ISME Journal , (21 July 2017) | doi:10.1038/ismej.2017.111
Unusual metabolic diversity of hyperalkaliphilic microbial communities associated with subterranean serpentinization at The Cedars
http://www.nature.com/ismej/journal/vaop/ncurrent/full/ismej2017111a.html
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