DVB-Tチューナで1575.42MHzの微弱信号(局発レベル)を生成
amazonのGNSS/RNSS関連の商品を見ていたら、かなり安い(激安?)のGPS用アンテナがありました。
商品の説明を見ると以下のようになっています。
・カラー : ブラック;全長 : 3 メートル
・SMAポート(オス)
・高感度アンテナ、LNAゲイン:25db、長さ:9フィート(3メートル)、中心周波数:1575.42MHz-3MHz/1575.42MHz+3MHz
・電圧:3~5V
・ウェイト : 60g
LNA内蔵、SMAコネクタ付同軸ケーブル(3m)付属で¥599というのは安いです。
当然No Brandですが、最悪の場合(ANT/LNA不良)の場合でも、SMAコネクタ付きケーブルは利用できそうです。
具体的な使用予定はありませんでしたが、何かの実験で役に立つかもしれないと言うことで買うことにしました。
(こうして段々ゴミが増えていく・・・)
【GPS外部アンテナ】
買ったのはいいのですが、手元にはこのアンテナを接続できるようなGPSモジュールはありません。
1575.42MH用のLNA内蔵アンテナ(電圧:3~5V)なので、SDRplay RSP2(1kHz~2GHz)の給電アンテナ端子(Port B:4.7V Bias-T)に接続すれば、原理的には入力信号のスペクトルが見える筈です。
しかしながら、GPSの信号は非常に弱く、しかもスペクトルが拡散されているので、下記の資料の「図2.3」に記載されているように、ノイズレベル以下となっており、生の信号の状態では受信を確認することができません。
GPSの基礎 - 東京工業大学松永研究室
http://lss.mes.titech.ac.jp/~matunaga/TEXT-ElemnetofGPS.pdf
このままでは、買ったアンテナが不良品か否かも確認できないので、なにか落ち着きません。
一番簡単なのは、1575.42MHのテスト信号発生器を使うことですが、そのような洒落たものが手元にある筈がありません。
なにか手はないかと考えてみたら、以前、アイコム BEACON No.168 「スマホにSDR TOUCH+ドングル」(https://www.icom.co.jp/beacon/talk/001895.html)のあとがきに書かれていたOH2FTG局の1270MHz送信実験の情報を参考にして、DVB-Tチューナドングルを利用して1090MHzの微弱信号を発生させたことがあったので、これと同じような手順で実験してみることにしました。
原理は非常に簡単で、スーパーヘテロダイン受信機において、局発(局部発振器:local oscillator)の発振周波数が、発生させたい周波数と一致するように受信周波数を設定するだけです。
昔の5球スーパーの時代であれば、生成希望周波数から中間周波数だけ上又は下に離れた周波数を受信すればOKですが、現在の受信機は複雑なので、色々なパラメータが絡んできます。
たとえば、以下の条件を確認する必要があります。
・受信方式(ホモダイン、ヘテロダイン、スーバーヘテロダイン等)
・周波数変換段数(Zero-IF、シングルスーパー、ダブルスーパー等)
・ヘテロダイン方向(局発周波数:上側/下側)
・ヘテロダイン方向(中間周波数:上側/下側)
・中間周波数の値(昔は、455kHz,10.7MHz,27MHz,58MHzくらいしかありませんでしたが、いまは多種多様)
・局発がPLL構成の場合は、VCOの可変周波数範囲は?、VCOとミキサと間の分周器の有無?、分周比(1/N)は可変か?、Nの可変範囲は?、受信周波数と分周比の関係は?、どの部分の信号を目的周波数にするか?、等不確定要素が増えます。
色々やって見たところ、当方の場合は、以下の関係で目的の周波数を生成することができましたが、一般性は無いかもしれません。
fRF=fVCO/N-fIF
fRF:受信周波数
fVCO:VCO周波数(生成希望周波数)
N:分周比
fIF:中間周波数
とりあえず実験してみました。
実験環境は以下の通りです。
漏洩局発信号送信用受信機
アンテナ:なし
チューナ:DVB-T+DAB+FM(R820T+RTL2832U)
Androidタブレット:Hyundai T7
SDRアプリ:SDR Touch(v2.67)
漏洩局発信号受信用受信機
アンテナ:今回購入した安いGPSアンテナ
チューナ:SDRplay RSP2
受信ソフト:SDRuno
GNSS/RNSS用受信機(干渉チェック用)
チューナ:GR-8013U(u-blox M8M)
表示ソフト:u-center
PC
ThinkPad X230(Windows 7)
生成希望周波数は、アンテナに印刷されていた"1575.42MHz"です。
計算では受信周波数は、390.285MHzになります。
単一周波数の連続搬送波であると、スプリアスとの区別がつけにくいので、三つの周波数をモールスのVのコードにしたがって順番に切り替えて、VVV・・・の音が受信できるようにしました。
最初は、390.285MHzで試してみましたが受信できないので、周波数範囲を広げたら392MHz付近で1575.42MHzの局発漏洩信号が受信できました。
【1575.42MHz微弱信号の生成と受信】
かなり弱いですが、DVB-Tチューナからの漏洩局発信号と思われる信号が受信できました。
VVV・・の断続信号なので、スプリアスではないと思います。
SDRplay RSP2の受信周波数精度はどの程度のものかはよく判りませんが、ADS-B信号を受信したときには、1090MHz付近に信号が見えていたので、極端にずれていることはないと思います。
これで、購入したGPSアンテナは不良品ではないように思えますが、LNAが動作しているという保証はありません。
念のために、給電能力がないPort Aのアンテナ端子の接続すると大幅に信号レベルが低下したので、LNAも動作しているようです。
不良品で無いことを確認するために結構手間がかかりましたが、半分は勉強のようなものです。
なお、漏洩局発信号は弱いですが、GNSS/RNSSの信号は非常に弱いので影響を心配していましたが、室外に設置したGR-8013Uの受信状態をモニタした範囲では、特に異状は見受けられませんでした。
【参考外部リンク】
rtl-sdr.com
Tagged: transmitting
https://www.rtl-sdr.com/tag/transmitting/
OH2FTG Labs >
RTL-SDR Transmitter experiments
https://sites.google.com/site/oh2ftg/home/rtl-sdr-transmitter-experiments
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