PAL音声搬送波受信テスト(SDR Touch)@シンガポール
外国の放送方式に興味があるので、海外旅行の際には、滞在先の国で実際に受信状態を確認してみたいです。
地上デジタルテレビの方式は国によって異なりますが、下記の資料(一寸古い資料かも)によれば、ATSCでは移動受信は不可能(impossible)と書いてあります。
Digital Broadcasting Experts Group (DiBEG)
Comparison of 3 DTTB systems
http://www.dibeg.org/techp/3comp/3comp.html
当方は、疑り深い性格なので、「本当なの?」ということで、安いATSCチューナを買ってホノルルで試してみようとしたことがあります。
2017年2月11日 (土)
ATSC用USBチューナテスト@ホノルル
http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2017/02/atscusb-5aa6.html
結果は、EPGは表示されるものの番組のコンテンツは表示されないという状態だったので、移動受信テストまで進みませんでした。
今回の旅行先のシンガポールでは、下記の資料によれば、テレビ方式として、PAL-B, PAL-G, DVB-T, DVB-T2 が採用されているようです。
Singapore Spectrum Management Handbook - IMDA
Issue 1 Rev 2.9 July 2017
https://www.imda.gov.sg/-/media/imda/files/regulation-licensing-and-consultations/frameworks-and-policies/spectrum-management-and-coordination/spectrummgmthb.pdf?la=en
p.25-26 (3. Broadcasting Services in Singapore)
(以下、上記URLから抜粋引用)
【Singapore TV(PAL/DVB-T)】
PAL
https://en.wikipedia.org/wiki/PAL
DVB-T
https://ja.wikipedia.org/wiki/DVB-T
上記IMDA資料を見ると、アナログ方式とデジタル方式が併用されているようです。
なお、下記の資料には「IMDAは同時放送として継続しているアナログの停波を2020年までに実施する計画を示している。」と書いてありました。
シンガポール(Republic of Singapore)
http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/singapore/pdf/065.pdf
これらの資料から判断すると、現時点ではPALとDVB-Tの両方で放送されていると考えてよいようです。
PALに関しては、以前NTSCのテレビで、映像搬送波信号に含まれる同期信号を無理やり表示させたことがあります。
なお、PALの音声はNTSCと同じ周波数変調ですが、インターキャリアの周波数が異なる(NTSC:4.5HMz, PAL-B/G:5.5MHz)ので、音声は復調できませんでした。
2013年2月23日 (土)
PAL放送をNTSCテレビで受信するとどうなるか?
http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2013/02/palntsc-036c.html
現在はDVB-Tの放送が始まっているようなので、DVB-Tの受信テストをしてみることにしました。
テストすると言っても、手元にDVB-T対応のテレビはありません。
なるべくコストと手間を掛けずに、DVB-Tを受信する方法を考えてみました。
ジャンク箱を覗いてみると、SDR(Software Defined Radio)の実験用に購入したDVB-T用のUSBチューナドングルが転がっています。
購入したのは正規のパッケージ品ではなく、ビニールの袋の中に、チューナ本体、アンテナ、リモコン、視聴ソフトCDが裸の状態で入っていたものです。
2013年10月 9日 (水)
秋葉原でR820Tチューナを3個買ってきました
http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2013/10/r820t-7a24.html
【DVB-T用チューナ】
SDR用に使う場合には、リモコンや視聴ソフトCDは不要なので、捨てようかと思ったのですが、もしかしたら何かに使えるかもしないということで保存していました。
なお、DVB-Tは、DiBEGの資料に書かれているように、"Segmented OFDM transmission"ではないので、DVB-Tチューナをワンセグチューナと呼ぶのは一寸気になります。
日本では、DVB-Tは受信できませんが、視聴ソフトはどのようなものかと思ってインストールしてみました。
インストール自体は特に問題なく出来たのですが、途中でシリアル番号を要求されたので、CDの袋に印刷されていた番号を入力すると、エラーメッセージが表示されます。
メッセージの内容は、「このシリアル番号は不正使用の可能性があるので、直接メーカとコンタクトして新にシリアル番号を入手して下さい。(文面はうろ覚えです)」的なものでした。
DVB-Tチューナは3セット購入していたので、他のCDを見てみると、3枚とも同じシリアル番号です。
【同一シリアル番号】
シリアル番号はユニークである筈なので、明らかに怪しいです。
ということで、DVB-に付属していた視聴ソフトを利用するという案は却下です。
チューナの中身が同じかどうかは判りませんが、ケースに"DVB-T+DAB+FM”と印刷されているチューナドングルは、世の中に多数流通していると思われるので、DVB-T受信用のフリー(or安い)ソフトがあるかもしれません。
できれば、Android用のアプリがあれば、スマホ上で走らせることができるので、使いやすいです。
Google Playを探してみたら、それらしい以下のアプリがありました。
Aerial TV - DVB-T receiver (Martin Marinov)
https://play.google.com/store/apps/details?id=info.martinmarinov.aerialtv
アップデート:2017年10月26日
インストール:10,000~50,000
Android 要件:4.1 以上
(以下、上記URLから抜粋引用)
----------------------------
Aerial TV is an offline receiver for DVB-T and DVB-T2 signals via a USB tuner. You don't need data plan or WiFi connection. Aerial TV works by picking up local digital signals off the air with a regular antenna. It supports MPEG2, MPEG4 and HD reception where available and offers EPG functionality.
----------------------------
説明を読んだ感じでは、SDR用に使っているDVB-Tチューナに対応しているようです。
インストールしてみることにしました。
ところが、「端末にアプリをインストールできません。」という表示が出て、端末を選択することができません。
【Aerial TV - DVB-T receive】
むりやり選択しようとすると、「このアイテムはお使いの端末が登録されている国ではインストールできません。」という表示が出て、先に進めません。
日本ではDVB-Tは受信できないのは判っていますが、DVB-T採用国に旅行したり赴任したりすることも有りうるので、国制限の理由がよく判りませんが、多分何か深い理由があるのでしょう。
「端末が登録されている国」の意味がよく判りませんが、もしIPアドレスのようなネットワーク上の位置で判断しているのであれば滞在先の国内であればインストールできるかもしれません。
可能性は低いような感じですが、淡い期待をもって現地で試してみることにしました。
ホテルの部屋から自分のブログにアクセスしてみると、RevolverMapsでは、シンガポールが自分の位置として表示されています。
【アクセス元表示】
もしかしてと思ってGooogle Playで"Aerial TV"のインストールボタンを押したのですが残念ながら対応国でないということで弾かれてしまいました。
最初に新規端末でGoogleアカウントを使用したときの国が登録されているのかもしれません。(単なる想像なので、違っているかもしれません。)
ということで、残念ながら今回はDVB-Tの受信実験はできませんでした。
端末を完全に初期化して再登録すればインストール可能だったかもしれませんが、そこまでの元気はありませんでした。
結構事前に手間がかかったのに、シンガポールのテレビ関連の信号が全く受信できないというのは一寸悲しいので、今まで受信したことがなかったPALの音声搬送波信号をSDR Touchで受信してみることにしました。
以前、PALを受信したときには、NTSC方式のテレビを使用し、映像搬送波周波数にチューナを同調させて、インターキャリア方式で受信したので、音声中間周波数(SIF)がNTSCとは異なるPALの音声信号は再生出来ませんでした。
受信条件は以下の通りです。
場所:Marina Bay Sands 10F
アンテナ:自作ネットストラップアンテナ(輻射エレメン長はADS-B用)
USBチューナドングル:DVB-T+DAB+FM (RTL2832U+R820T)
スマートフォン:SH-01F
SDRアプリ:SDR Touch
受信モード:WFM
SDR Touchには、Singapore Spectrum Management Handbookに記載されていたPALの周波数をプリセットしておき、手動で順次切り替えました。
スマホをテーブルの上に置いた状態では、あまり受信状態がよくありませんでしたが、何局が受信できました。
【PALの音声搬送波信号を受信】
雰囲気としては、アナログTVの音声をFMラジオで聞くという感じです。
PAL-GはUHFなので一寸受信は難しいですが、PAL-BはVHFなので、以前日本で売られていたような、CH1~CH12対応のテレビ音声受信可能なFMラジオがあれば、シンガポールでCH5とCH8の音声を聞けるかもしれません。(2020年まで?)
あるいは、安い広帯域受信機を買えば、PAL-BとPAL-Gの音声が受信できると思います。
SDR Touchでは、DVB-T/T2の番組を表示することはできませんが、搬送波のスペクトルは表示できる筈なので、CH29の中心周波数(538MHz)を受信してみました。
【538MHz】
何かスペクトルが見えていますが、DVB-T2の信号なのか、あるいは、ノイズやスプリアスなのかはよく判りません。
DVB-Tの番組表示は次の機会に・・・
【蛇足】
IMDAの資料を見ると、短波帯にかなりの数の周波数が割り当てられています。
"Babcock Communications"用ということのようですが、初めて聞きました。
調べてみたら、防衛用のOTH通信に関係しているみたいです。
Defence High Frequency Communications Service
https://en.wikipedia.org/wiki/Defence_High_Frequency_Communications_Service
"In 2003 VT Merlin Communications (now Babcock International Group) were awarded the contract to operate the system for a period of fifteen years on behalf of the Ministry of Defence."
EMP対策として短波が見直されているという噂(真偽は不明)を聞いたことがありますが、これと関係あるのでしょうか? (単なる妄想です)
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