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2018年7月28日 (土)

電子キーへの干渉

 ネットニュースで以下の記事を見かけました。

    軍艦の影響?車の電子キー不具合、長崎で多発 原因不明
    2018年7月23日19時06分
    https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5QBTL6YTIPE03J.html

 有料会員でないと記事の全文は読めませんが、5月に佐世保で電子キーが正常に動作しなくなったという話のようです。

 素人無線家の好奇心で調べてみると、以下の記事(時系列)で大体の話が分かりました。

  西日本新聞
   車の電子キー無反応、トラブル相次ぐ 長崎県佐世保市で200件超 「米軍基地が影響か」の声も
  2018年05月29日 06時00分
  https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/420166/

  西日本新聞経済電子版
  佐世保の電子キー不具合を調査 九州通信局、電波障害確認へ
  2018年05月30日 03時00分 更新
  http://qbiz.jp/article/134775/1/

  西日本新聞
  佐世保の電子キー問題、米軍が調査へ 防衛局に情報提供要請
  2018年05月31日 06時00分
  https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/420772/

  西日本新聞
  佐世保の電子キー不具合、米軍が影響否定
  2018年06月01日 06時00分
  https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/421092/

  ベストカーWeb
  電子キーが使えない!! 原因は本当に軍用無線のせい!? 緊急時の使用法も解説
  2018年6月11日 / コラム
  https://bestcarweb.jp/news/motorsport/2857

 素人考えでは、電子キーで使用している周波数と同じまたは近傍の周波数が、他の送信機器で使用されているか、あるいは、周波数には無関係に超強力な信号で受信機の入力段がブロックされているか程度しか思いつきません。
 
 とりあえず、車の電子キーで使用されている周波数を調べてみました。

  平成 24 年度第 3 回医療電磁環境研究会
  電子式車両用施解錠装置の電波強度測定および植込み型心臓ペースメーカへの影響の検証
  http://www.bme-emc.jp/pdf/24no3Ishida.pdf

  製造国やメーカーで異なるようですが、「中心周波数は、312.15~ 315.00MHz の範囲内 (VolvoV60 のみ426.07MHz)であった」と書かれています。
 315MHz付近のようです。

    簡易スマート・キー・チェッカ の製作
    http://www.rf-world.jp/bn/RFW31/samples/p124-125.pdf

  この資料には、「送信周波数として国内ではUHFの315 MHz帯が使われており」と書いてあります。

 
  リモートキーレスエントリ(RKE)システムの要件
  https://www.maximintegrated.com/jp/app-notes/index.mvp/id/3395

  この資料にも「ワイヤレスの搬送周波数は現在、米国/日本で315MHzおよびヨーロッパで433.92MHz (ISM帯域)です。」という記載があります。

 
 英文のWikipediaには、以下のように書いて有りました。

  Remote keyless system - Wikipedia
  https://en.wikipedia.org/wiki/Remote_keyless_system
 "Most RKEs operate at a frequency of 315 MHz for North America-made cars and at 433.92 MHz for European, Japanese and Asian cars."
 
  この説明だと北米産は315 MHz、欧州/日本/アジア産は433.92 MHzとなっていますが、日本の実情とは違っているような気がします。

 一寸古いですが、下記の資料には、キーエントリーの周波数について書いてありました。

  平成19年2月7日.
  電波法施行規則及び無線設備規則の各一部を改正する省令案について
  (平成18年12月13日 諮問第35号).
  [315MHz帯タイヤ空気圧モニター、キーレスエントリーシステム等の導入に伴う制度整備]
  http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/denpa_kanri/pdf/070119_2.pdf

 この資料には、「特定小電力無線局が使用する周波数の電波を追加 313.625MHz(312MHz を超え315.25MHz 以下)」という記載があるので、315MHz帯というのは、312.00MHzを超え315.25MHz以下であると考えていいようです。
 前述の医療電磁環境研究会の資料に書いてあった「中心周波数は、312.15~ 315.00MHz の範囲内 (VolvoV60 のみ426.07MHz)であった」という説明に合致します。

    我が国の電波の使用状況
    平成29年6月  総務省
    http://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/myuse/use/ika.pdf

  この資料の「30MHz-335.4MHz」の表には、キーレスエントリーの中心周波数として313.625MHzが記載されています。

【我が国の電波の使用状況 30MHz-335.4MHz】
30mhz3354mhz


313625mhz

 なお、英文のWikipediaに記載されていた433.92MHzは、日本ではアクティブ電子タグシステムに割り当てられていますが、アマチュア無線の430MHz帯の利用頻度が高い周波数範囲の近くなので、電子キーの周波数としてはあまり適していないような気がします。

【我が国の電波の使用状況 335.4MHz-960MHz】
3354mhz960mhz


43367mhz43417mhz

  以下の資料には、「アマチュア局からの干渉を許容することが前提であるため、干渉の可能性があることを十分認識し、周辺にシールドを設けるなど運用に支障が生じないような工夫が重要。」と書いてあります。

  433MHz帯アクティブタグシステムの技術的条件 - 総務省
  http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/bunkakai/pdf/060720_3_2-1.pdf

  この資料の中のアマチュア局数の推移のグラフを見ていると、そのうち消滅するから支障無い的な雰囲気が・・・(現在でも絶滅危惧趣味と言われているようです)

  市場には、433MHzのキーレスエントリーが流通しているようですが、「電波法に基づく免許等が必要な無線設備」のリストに記載されているものもあります。

  電波法に基づく免許等が必要な無線設備
  http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/illegal/result/

  平成26年度掲載分
  http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/monitoring/illegal/result/siryo002.pdf

【平成26年度掲載分(抜粋)】
_1
_2


 「電波法に基づく免許等が必要な無線設備」というのは一寸遠回しな表現ですが、簡潔に言うとリストに記載されている製品を使用すると電波法違反になるということです。
 電波法違反は結構罪が重いので要注意です。

 話が逸れましたが、以上のことから考えて、国内で合法的に使用されている車の電子キーの周波数は、基本的に315MHz付近であると考えてよいようです。

 やっと周波数が特定できたので、次は干渉の原因について考えてみました。

 この種の事象は、車の先進国である米国でも発生していることが推定されるので、関連情報を調べてみました。

 関係しそうな記事がありました。

  SHARED FREQUENCY: Radio band may be key to keyless mystery
  Sun | Local
  By Lloyd A. Pritchett, Sun Staff ? May 13th, 2001
  https://products.kitsapsun.com/archive/2001/05-13/0002_shared_frequency__radio_band_may_.html
(上記URLから抜粋引用)
-----------------------------------
The mysterious outages disabled keyless remote entry systems on thousands of vehicles in a roughly 50-square-mile area around Bremerton and Port Orchard on March 21-26 and also for several hours April 12.
-----------------------------------
The March outage occurred just as the Bremerton-based aircraft carrier USS Carl Vinson was returning to port after several weeks at sea. The April outage occurred the day after the carrier USS Abraham Lincoln arrived in Bremerton for maintenance work.
-----------------------------------
The affected keyless remote frequency of 315 megahertz is near the upper end of the military band, which includes all frequencies between 225 and 328.6 megahertz.
-----------------------------------
The Sun's research also found that those vehicles not affected by the outage are equipped with remote entry systems that use other frequencies, such as 434 megahertz and 314.2 megahertz.
-----------------------------------
There was no immediate explanation why the FCC officials asked about the 305-megahertz frequency, which is different from the one assigned to the malfunctioning keyless remotes.
Other experts also agreed it would be wrong to conclude the outages were caused by military equipment just because the affected frequency is in a military-reserved section of the spectrum and coincided with the arrival of military ships.
-----------------------------------
Outages of the type that hit Bremerton, affecting a 50-square-mile area for several days or several hours, are a rarity and too large to be caused by amateur radio operations, he said.
-----------------------------------

 障害発生の範囲が50マイル(80km)四方で、数千台の車両が影響を受けたようなので、佐世保に比べて規模が大きいです。

 記事には、色々書いてありますが、周波数範囲や軍艦の寄港時期が重なっているということでは判断できず、結局原因は不明ということのようです。

 軍用のATC(GCA?,GCI?)の話がでてきますが、通常は1回1秒程度で、長くても数秒なので、普通の状態では連続的に搬送波が出力されているのは考えにくいような気がします。
 米国の場合はFCCがかなり詳細に調査したようですが、"tight-lipped"という表現が出てくるので、色々な事情があるのかもそれません。

 315MHzでは影響があったけれども、434MHzと314.2MHzでは影響が無かったということですが、これがよく理解できません。
  "The Sun's research also found that those vehicles not affected by the outage are equipped with remote entry systems that use other frequencies, such as 434 megahertz and 314.2 megahertz."
 日本の場合は、315MHz帯は、312.00MHzを超え315.25MHz以下の周波数であると理解していますが、その場合には、315MHz帯の中に314.2MHzが含まれてしまいます。
 有効桁数がわかりませんが、この記事の315MHzが315.0MHzを意味するのであれば、315.0MHzと314.2MHzは800kHzしか離れていません。
  比率で考えると0.3%程度です。
  ということは、信号源は純度が高い周波数が安定した搬送波ということになるので、周波数ホッピングやスペクトラム拡散などは対象から外れてしまう可能性が高いです。
 物理量を比較する場合は有効桁数を揃えて欲しい・・・。

 
 別の記事を探してみました。
 Washington Postに関係しそうな記事がありました。

  washingtonpost.com  > Metro  >Maryland 
  Keyless Remotes To Cars in Waldorf Suddenly Useless
  By Joshua Partlow
  Washington Post Staff Writer
  Monday, July 5, 2004; Page B01
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A28217-2004Jul4.html

 最初はスーパーマーケットの駐車場での話しなのですが、最後のほうはATTタワーからの秘密の信号(?)的な話になっています。
 315MHzの他に302MHzも出てくるのですが、302MHzは軍用信号の影響を受けるのか受けないのかよくわかりません。
 Bremertonのケースでは、305MHzは影響を受けないとなっています。
 前述のBremertonの話が引用されていますが、この記事でも結局原因は不明ということのようです。

 
 素人考えで色々妄想してみましたが、結局判りませんでした。

  DEURAS(DEtect Unlicensed Radio Stations)では、25MHz~3GHzを24時間監視できるので、簡単に位置が特定できるような気が・・・(毎年電波利用料を納めています)
 

    不法無線局探査設備(DEURAS).
    http://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/mymedia/26/0924.html

    電波監視システム(DEURAS) (http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/K/deurs.html
Deuras



【参考外部リンク】
 スマートキー | アイシンものづくり精神
 http://www.aisin.co.jp/pickup/spirits/html/204.html

【蛇足】
 どこかで315MHz用を433MHz用に改造するという記事を見かけましたが、これって・・・

 

【2018.07.29追記】
  以下の資料には、関係があるかもしれない情報が書いてありました。

  MANUAL OF REGULATIONS AND PROCEDURES FOR FEDERAL RADIO FREQUENCY MANAGEMENT
  May 2010 Revision of the 2008 Edition
  https://www.ntia.doc.gov/legacy/osmhome/redbook/Manual_05_10_Full.pdf

 United States Tableを見ると以下の記載あります。

  285-315
  AERONAUTICAL RADIONAVIGATION
  MARITIME RADIONAVIGATION (radiobeacons)

  285-325
  MARITIME RADIONAVIGATION (radiobeacons) 5.73
  5.72 5.74 Aeronautical radionavigation (radiobeacons)

 妄想ですが、300MHz帯のTACANのようなもの?

 ナビゲーションやビーコンであれば、メンテナンスのために連続送信することもあり得るかもしれません。

 以下の資料は欧州の周波数割り当てに関するものですが、312-315MHzには防衛用(軍用)に関する記載があるので、一寸関係があるかもしれません。衛星経由のモバイル通信?

  Electronic Communications Committee (ECC)
  ERC REPORT 25
  THE EUROPEAN TABLE OF FREQUENCY ALLOCATIONS AND UTILISATIONS IN THE FREQUENCY RANGE 9 kHz to 3000 GHz
  https://www.fmv.se/Global/Verksamhet/Frekvensf%C3%B6rvaltning/REF%205_1_%20ECC%20Frekvensplan_ERCREP025_110621.pdf

European_table_of_frequency_allocat



  Frequency bands for LPD in EMEA countries - R1 - CEPT
  https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=18&ved=2ahUKEwjw77yXk8PcAhUMebwKHYI3AjQ4ChAWMAd6BAgHEAI&url=https%3A%2F%2Fcept.org%2FDocuments%2Ffm-44%2F32282%2Ffm44-16-020_m2m-via-satellite&usg=AOvVaw0gCSCgt0j_adaxGhei8V8H
(以下上記URLから抜粋引用)
--------------------------------------
The frequency range 312-315MHz is partly authorized for LPD. These authorizations happen often in Asian countries, such as China and Japan and also few countries in other Regions. The possibility for Mobile Satellite Services could make it a good candidate for complementary space IoT constellation. However this frequency band is not authorized in Europe and Northen America where space services are in use for military purposes, often on an exclusive basis. (UHF Follow-On (UFO) Satellite Constellation and Mobile User Objective System (MUOS))
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