20kHz以上が表示可能なスペアナ・アプリ”UltraSound Detector”
今日も朝から蝉がうるさいです。
いかにも高調波を沢山含んでいるような耳障りな音です(感じ方には個人差があります)。
夏休みで暇なので、どんな周波数成分を含んでいるのか調べてみました。
予備知識がゼロで始めるのは効率が悪いので、ネットでざっと調べてみました。
Wikipediaには、「発音筋は秒間2万回振動して発音を実現するとされる。」 としか書いてありません。20kHz? 出典は不明です。
セミ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%9F
以下の資料の測定結果のグラフを見ると、3~10kHzのレベルが高いけれども、16kHzでそれ以上のレベルになっています。
セミの鳴声(事務所内)の騒音レベル測定
https://www.e-koubou.co.jp/sousin_archiives_109.html
グラフの変化から想像する、もっと高い周波数まで伸びているような感じがしますが、測定範囲が20Hz~20kHzなので、これより高い周波数のデータはありません。
以下の資料は、TCD-D10 ProIIとF-780を使用した観測結果が書かれていました。
Entomological Science (2013)
Two new species of Cicadatra (Hemiptera: Cicadoidea) from Greece
http://www.cicadasong.eu/files/article-31.pdf
結論としては、5~17kHzということだったようです。
なお、この資料では"F-780 (frequency response 22-50 kHz)"となっていますが、仕様では50Hz~18kHzとなっているので、別のもの? 特注品?
もしオリジナルのままであれば、18kHz以上は拾えないような気がします。
他の資料も見てみましたが、20kHz以上の例は見かけませんでした。
当方は疑り深い性格なので、「本当なの?」ということで、もう少し調べてみました。
以下の資料には、広帯域マイク(Ultramic 250:0~125 kHz)による測定例が記載されていました、
High frequency components of the songs of two Cicadas (Hemiptera Cicadidae) from Sardinia (Italy) investigated by a low-cost USB microphone
April 2015
www.biodiversityjournal.com/pdf/6(1)_41-52.pdf
結論だけ斜めに見た範囲では、測定した蝉が特殊なものであったのかどうかはわかりませんが、高調波は100kHz程度までかなりのレベルで存在するということのようです。
それでは近所で鳴いている蝉はどうなの?ということでチェックしてみることにしました。
当然まともな測定器などは無いので、スマホのアプリを探してみました。
音声帯域(可聴周波数帯域)のスペアナアプリは色々ありますが、20kHz以上の周波数に対応するアプリはなかなかありません。
色々探してみると、使えるかもしれないような下記のアプリがありました。
UltraSound Detector - Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.microcadsystems.serge.ultrasounddetector&hl=ja
“synthetic telepathy"とか"ultrasonic weapons"とかいう怪しい言葉がでてきますが、説明によれば、25kHz程度まで表示できるようです。
とりあえずインストールしてみました。(安全性は不明です)
【UltraSound Detector】
アプリを走らせて、蝉の音をマイクで拾って表示させてみました。
デフォルトの44100Hzのサンプリングレートでは周波数表示範囲が17.4~21.6kHzですが、48000Hzにすると17.1~23.4kHzに広がります。
【蝉の鳴き声のスペクトラム(表示範囲:17.1~23.4kHz)】
蝉の種類はよく判りませんが、23kHz程度まで表示されています。。
グラフをみる限りでは、入力音声信号系の周波数特性が超音波の領域まで伸びているように思えますが、A/D変換を伴うデジタル処理の場合には、サンプリング周期や折り返しの関係で、正常に表示されない場合があるので、にわかには信用できません。
念のために、低周波発振器で20kHz付近の信号を発生させて、40kHz用超音波スピーカを無理やり直接駆動し、スピーカからの超音波をスマホのマイクに供給してチェックしてみました。
なお、デジタル周波数カウンタの表示値は、レベルが不適切だったり、ノイズが混入したりしていると不正確な値を表示することがあるので、念のため2台で測定しました。
実験環境は以下の通りです。
低周波信号発生器:LEADER LAG-120A
超音波スピーカ:UT1612 (40kHz用)
周波数カウンタ:VICTOR VC2000, METEX-P10
使用スマホ:SH-01F
スペアナアプリ:UltraSound Detector
スピーカとマイクとの距離:約3cm
【20kHz付近のUltraSound Detectorの表示変化】
約17kHzと約24kHzの間で発振周波数を往復させてみましたが、特に折り返しなどの挙動不審なとことろはありませんでした。
但し、24kHzを超えると正常に動作していない感じでした。
サンプリング周波数が48000Hzである場合は、上限周波数は24kHzなので、理屈は合っています。
スマホのマイク入力系の周波数特性は、可聴帯域ぎりぎりかと思っていたのですが、結構余裕があるのは意外でした。(将来の応用を見込んでいる?)
一寸話は飛びますが、UltraSound Detectorには、超音波を検出したときにアラームを出したり、場所を特定したりする機能があるようなので、自分のスマホに勝手にアクセスされたくない人には、この種のアプリが必要になるかも・・・
2018年06月28日 23時00分 ソフトウェア
FacebookがTV広告で「人には聞こえない音」を流しスマホに秘密裏に周囲の音を録音させる可能性
https://gigazine.net/news/20180628-facebook-phones-record-audio/
United States Patent Application 20180167677
BROADCAST CONTENT VIEW ANALYSIS BASED ON AMBIENT AUDIO RECORDING
http://www.freepatentsonline.com/20180167677.pdf
"the frequency of the audio feature is closer to 20 kHz"
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