WWVB(60kHz)の受信にまた失敗@HNL
ハワイに遊びに行くたびにWWVBの受信を試みているのですが、今まで受信できたことはありません。
NISTのカバレージエリアの図を見た感じでは、ぎりぎりで受信できても良いような気がしますが、今まで5000km以上離れた場所での明確な受信レポートを見たことがありません。
Coverage Area for NIST Radio Station WWVB
https://tf.nist.gov/stations/wwvbcoverage.htm
【WWVB Coverage Area】(上記URLの画像をGIFアニメ化)
(画像を左クリックでアニメーション開始)
下記の資料には、"The station continuously broadcasts a 70 kW signal at a frequency of 60 kHz that covers the Continental United States (CONUS), and also reaches Alaska and Hawaii during the nighttime hours."と書いてあるのですが・・・
WWVB Radio Controlled Clocks:
Recommended Practices for Manufacturers and Consumers (2009 Edition)
http://tf.nist.gov/general/pdf/2422.pdf
今回、ハワイに行く機会があったので、懲りずにWWVBの受信に再度挑戦してみました。
6000km以上離れた40kHzのJJY(ERP23kW)が受信できたのだから、JJY(60kHz)の電波が届かないような電波伝播条件で、且つ、米国方面の電波伝搬の条件が良ければWWVB(60kHz, ERP70kW)が受信できるかもしれないと甘い期待を持って試して見ました。
世界の標準周波数報時局
http://jjy.nict.go.jp/QandA/reference/hflfstation.html
WWVBの送信スケジュールがどうなっているのかよく判りませんが、実際に電波が出ていなければ始まらないので、米国本土での受信状態を確認してみました。
下記のサイトで米国各地での受信状態が確認できるようですが、自分の耳でリアルタイムに確認したいです。
The Current Readability of the WWVB Time Code
https://tf.nist.gov/tf-cgi/wwvbmonitor_e.cgi
世の中には便利なシステムがあって、世界各地に設置されたリモート受信機を日本から遠隔操作できるようになっています。(場所や周波数の制限はありますが・・・)
WWVBはコロラド州のフォートコリンズ(Fort Collins)から送信されているので、近くのN6GN局のリモート受信機を利用させてもらいました。
0-30 MHz N6GN Remote NW Fort Collins, Colorado | Grid: DN70jo, ASL: 2300,
http://n6gn.no-ip.org:8075/
躓きながら歩くようなWWVBの独特のリズムの信号が聞こえます。正常に送信されているようです。
次に、ハワイでの受信状況を確認してみました。
もし、ハワイのリモート受信機で受信できていれば、ホテルのラナイでも受信できるかもしれません。
ハワイのリモート受信機は以下のNH6XO局のものを利用させてもらいました。
KiwiSDR at NH6XO - 220' Unterminated BEVERAGE oriented N-S with horizon blockage to all points
West Kaneohe, Hawaii, USA - Windward OAHU | Grid: BL11, ASL: 55m,
http://72.235.217.245:8073/
それほど高さはありませんが、多分ホテルよりは良好な受信環境でしょう。
しばらく受信してみましたが、ノイズに埋もれた断続音のようなものは聞こえましたが。WWVBであると確認できるような信号は確認できませんでした。
感じとしては、受信が難しいようですが、電波伝播は挙動不審なので、もしかしたらと思って、ホテルのラナイにアンテナを設置して、宿泊中に何度か60kHzを受信してみました。
受信環境は以下の通りです。
日時:2019.05.19-22
場所:Moana Surfrider, A Westin Resort & Spa, Waikiki Beach, Tower Wing 5F
アンテナ:自作ループアンテナ (300φ,88ターン)
受信機:SDRPlay RSP2 (Hi-Z input)
タブレットPC:Ployer momo8w (Windows 10 mode)
ソフトウエア:SDRuno
受信周波数:60kHz
残念ながら、丁度60kHz近傍に強力なノイズが発生しているために信号が潰されてしまいます。
【SDRunoで見た60kHz付近のスペクトラム】
(画像を左クリックで拡大表示)
最近の電気機器は、電源にインバータを使用していることが多いので、原発振周波数や高調波によって、希望波の信号が抑圧されることがよくあります。
前回は、約6000km離れたJJYが受信できたので、約5000km離れたWWVBも受信できるのではないかと甘い期待をしていたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
今回は60kHz付近のノイズが酷かったので、少しくらい電波伝播の条件が良くても、受信は無理だったかもしれません。
下記の資料の「図4●南極航路での40kHz電界強度」を見ると、10000kmを超えてもJJYの"Measured"のデータが存在しているので、受信環境が良くて(海の上ならノイズが少ない!)とプロ用の受信設備(アンテナ&受信機)が使用できればハワイでWWVBが受信できるかもしれません(素人無銭家のレベルでは妄想ですが・・・)
NICT NEWS 2011年12月号「長波標準電波の伝搬特性と電界強度計算法 ...
https://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/1112/03.html
風体が超怪しくなりますが、ダイヤモンドヘッドの頂上にアンテナと受信機を持っていけば聞こえるかも・・・
【関連内部リンク】
2018年12月22日 (土)
ハワイでJJYのモールスを受信
http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2018/12/jjy-29ae.html
2019年1月18日 (金)
香港でJJYのモールスを受信
http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2019/01/jjy-c015.html
(2019/06/01追記)
下記の資料を見ると、5000km以上離れた市街地において、普通のCWモードでWWVBの受信を確認するのは結構難しそうです。
NiCT
特集 2-9 長波標準電波の電界強度計算法の開発と測定
http://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/kihou-vol56no3_4/kihou-vol56no3_4_0209.pdf
「長波帯標準電波では距離4,000 km を越えるあたりから信号強度が背景雑音レベルと同程度となる。1 時間ごとの呼出符号を聴取して信号の有無を確認することはできるが、多大な労力と聴取技術を必要とする。標準電波は長短はあるが、1 秒周期のパルスで振幅変調をかけていることを利用して、自己相関係数による信号判定を導入した。(p102)」
「受信点が都市部近傍を通過する際には、40 kHz、60 kHz とも強い人工雑音による受信障害を受けた。(p104)」
NiCT
Prediction Method and Proof Measurement of LF Standard Frequency Waves
http://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/journal-vol57no3_4/journal-vol57no3-4_0209.pdf
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