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2021年6月 1日 (火)

無線充電技術「GuRu」に関係するかもしれない米国公開特許

 一寸旧聞になりますが、以下の記事を見かけました。

  CNET Japan
  モトローラ、OTAワイヤレス充電技術のGuRu Wirelessと提携
  2021年05月13日
  https://japan.cnet.com/article/35170655/

 この記事によれば、3m以上離れたところからスマホ等に電力を送ることができる可能性があるとのことです。
 ミリ波帯を使用するようなので、単純に考えると周波数は30GHz~300GHz(EHF)ということになります。


 現在、実験用(遊び用)にメインで使用しているHuawei Mate 20 Proは、Qi規格のワイヤレス充電に対応しているので中々便利です。

【(01)Huawei Mate 20 Pro ワイヤレス充電中】
01huawei-mate-20-pro

 ワイヤレス充電(無線給電)の有用性は実感していますが、趣味で無線をやっていると、充電用に使用される電波の漏洩信号が気になります。
 現在使用している広帯域受信機は、SDRplay RSP2ですが、受信周波数範囲は1kHz~2GHzなので超広帯域です。

 周波数が高い方は、ノイズやスプリアスの影響は比較的少ないですが、JJYやWWVBが使用している40~60kHzは正体不明のノイズが多いです。
 エアコンや照明器具にインバータが使用されていることがあるので、これらがノイズ源となる可能性があります。
 特に最近はワイヤレス充電用の電波も無視できません。
 以前、Qi無線充電器からの漏洩信号の受信実験をしたことがあります。

  2018年7月22日 (日)
  Qi無線充電器からの漏洩信号
  http://kenshi.air-nifty.com/ks_memorandom/2018/07/qi-50c3.html

 漏洩信号は、100~200kHzの範囲で移動しているので、135kHzのアマチュアバンドを使用する場合は影響があるかもしれません。


 話が脇道に逸れましたが、本題のGuRuは、上記CNETの記事によれば、ミリ波帯を使っているようです。
 しかしながら、GuRuのサイトを見ると、24GHzを使っているようなことが書いてあります。

  Technology
  https://guru.inc/technology-2/
  Millimeter Wave Operation
 "GuRu is the only wireless power solution operating in the millimeter wave spectrum – 24GHz frequency – enabling an unprecedented level of miniaturization and efficiency for power"

 また、下記の記事によれば、ISM band (24.0-24.25GHz)が使用されているようです。

  ZDNet
  Always be charging: Can GuRu be the Wi-Fi of power?
  https://www.zdnet.com/article/always-be-charging-can-guru-be-the-wi-fi-of-power/
  "According to its founders, GuRu's technology is compliant with the definition of an ISM device and is operating in an internationally recognized ISM band (24.0-24.25GHz)."

 送信アンテナを自作したことがあるHF(3.5, 7, 14, 21, 28MHz)、VHF(50, 144MHz)、UHF(430MHz)であれば、周波数と波長の関係はすぐに判ります(50MHz → CQ 6-meter)が、SHFやEHF等のなじみのないバンドではピンときません。


 GuRuは24GHzを使っていると思われるのに、"operating in the millimeter wave spectrum"と書いてあるのがよく分かりません。
 下記の資料を見ると、24GHzはマイクロ波(SHF)に含まれています。

  総務省電波利用ホームページ
  周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴
  https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/

 「マイクロ波」ではインパクトが小さいので、『ミリ波』に近い「マイクロ波」(24GHz)を意図しyている?

 
 話があちこちに飛びますが、GuRuの資料を読んでいるとGuRuの胆は、Smart LensingやRF Lensingにあるような感じがします。

  Technology
  https://guru.inc/technology-2/
  Smart Lensing
"A fundamental departure from previous power transfer methods, GuRu employs proprietary “Smart Lensing” technology that enables the use of focused energy beams for highly efficient power transfer. Smart Lensing” pinpoints specific targets for power delivery rather than flooding an entire room with wireless energy."

  GuRu
  https://guru.inc/technology/
  RF Lensing
"Radio Frequency Lensing allows us to send concentrated beams of radio frequency through the air, and to your devices. Radio wave energy is generated in the GU, and then it is refracted and channeled into highly focused beams, which reach and power your devices. This refraction of radio frequency into beams is similar to how a magnifying glass works—how diffuse light is collected, refracted, and then focused on a small point in space."

 当方の超大雑把な理解では、GuRuは、ビームフォーミングとビームステアリングを行うWi-Fiルータの大電力版(電力伝送版)のような感じで、ピンポイントでターゲット(Ru:Recovery Unit)を狙い撃ちするようです。
 Ruは、一般的にはRectenna(Rectifying Antenna)と呼ばれるデバイスと同様な機能を果たしているように思えますが、詳細は判りません。

  レクテナ
   https://www.japan-pcb.info/pickup/?m=entry000182
   https://www.den-gyo.com/labo/report/report02.html

  Rectenna(Rectifying Antenna)
   https://idstch.com/technology/electronics/rectenna-rectifying-antenna-critical-technology-wireless-power-systems-powering-military-drones-receiving-solar-power-satellites/

 

 受信側の話はとりあえず横に置いておいて、RF Lensingの詳細がよく分からないので、安直にGoogle Patentで調べてみました。

  Google Patent
  https://patents.google.com

 なお、Google Patentを業務で使用することを禁止している企業もありますが、個人が趣味で調べる範囲であれば問題ないと思われます。

 検索のキーワードは、これも極めて安直に"RF Lensing"を使いました。

  https://patents.google.com/?q="RF+Lensing"&oq="RF+Lensing"

 GuRuに関係しそうな特許が何件かヒットしました。
 検索結果のリストのトップの特許がRF Lensingに関係がありそうです。譲受人はCalTechです。

  US20180233964A1
  Smart RF Lensing: Efficient, Dynamic And Mobile Wireless Power Transfer
  Current Assignee California Institute of Technology CalTech
  https://patents.google.com/patent/US20180233964A1/en?q="RF+Lensing"&oq="RF+Lensing"
  Download PDF:
  https://patentimages.storage.googleapis.com/f8/05/07/d998e30b26e0e1/US20180233964A1.pdf

 図面と公開クレームをざっと見た範囲ではRF Lensingに関係がありそうです。
 なお、この米国公開特許は、ラフな検索でたまたま見つかったものであり、関連する他の特許が存在する可能性があります。また、権利関係は確認していません。


What is claimed is:
1. An RF lens comprising:
a plurality of radiators configured to radiate electromagnetic waves to construct a scattering behavior of one or more objects present in the path of the electromagnetic waves radiated by the RF lens.
2. The RF lens of claim 1 wherein said plurality of radiators are configured to vary phases of the electromagnetic waves to compensate for the constructed scattering behavior so as to wirelessly power a first device positioned away from the RF lens.
3. The RF lens of claim 2 further comprising tracking a position of the first device in accordance with the constructed scattering behavior.
4. The RF lens of claim 2 further comprising varying phases of the plurality of radiators in accordance with the constructed scattering behavior so as to cause the scattered waves to power the first device.
(以下省略)

 この特許では、"RF lens"という用語を使っていますが、実施例を見た範囲では誘電体を使用した通常の電波レンズではなく、フェーズドアレイアンテナのような感じがします。

  ミリ波レンズ Millimeter Wave Lens
  http://keycom.co.jp/jproducts/mms/mms6/miriha%20renzu.htm

  5G ミリ波
  フェーズドアレイアンテナ
  https://mmwavetech.fujikura.jp/ja/assets/pdf/White_Paper_Phased_Array_Antenna_MW96-11-21-0001.pdf

 明細書はざっと見ただけなので、理解が間違っているかもしれません。
 後でゆっくり読んでみます。

 細かい話ですが、図面を見ていて、一寸気になった点があります。
 FIG. 10に利用形態が描かれているのですが、mobile device 320を耳に当てた状態で充電が行われています。

【US20180233964A1 FIG. 10】
02us20180233964a1-fig10


(以下、US20180233964A1から抜粋引用)
--------------------------------------------
[0022]
FIG. 10 is a schematic diagram of an RF lens concurrently charging a pair of mobile devices and a stationary device, in accordance with one exemplary embodiment of the present invention.

[0057](抜粋)
FIG. 10 shows RF lens 200 wireless charging mobile devices 320, 325 and stationary device 330 all of which are assumed to be indoor.
--------------------------------------------


 下記のデモ動画では、手が検出されると送信が停止していますが、FIG. 10では手に持ったmobile device 320に充電が行われています。

  GuRu Technology Sampler
  https://vimeo.com/445559999


 下記の記事によれば、部屋に入るだけで充電開始になるので、スマホで電話しながらGuRu対応の部屋に入った場合に、映画Matrixの"Dodge this !"状態にならないといいのですが・・・

  Gizmodo
  スマホのワイヤレス充電、パッドに置かずとも部屋に入るだけでスタート可能に!
  2021.05.21 18:00
  https://www.gizmodo.jp/2021/05/motorola-guru.html#cxrecs_s

 ウルトラペンシルビームなら、スマホのレクテナ部分のみにビームを照射して、手や側頭葉には照射しないというような高度な制御が可能?
 以下の説明を見ると、スマホを使用しながらの充電は難しいような気がしますが、正確なところは良く判りません。

  Technology
  https://guru.inc/technology/
  Human-Centered Design
"GuRu’s sensing technology and safety interlocks pause energy beams within milliseconds, if a person or pet approaches a beam’s path."


 なお、特許明細書の「実施例」と現実の「実施例」が完全に対応していることは少ないので、FIG. 10は単なるお話ということなのかもしれません。

 思いつくままにだらだらと書いてきましたが、ノイズとしての漏洩信号の観点から考えると、周波数が24GHzであれば、趣味の無線受信にはあまり影響はないかもしれません。
 ただし、使用周波数が24GHzという非常に高い周波数であり、また、伝送電力が数Wという今までの漏洩信号とは桁違いの大電力なので、安全性が一寸気になります。
 感覚的には、結構ハイパワーのマイクロ波/ミリ波が部屋の中を飛び回ることになるので・・・

 以下の資料には、「超高周波数(ミリ波、サブミリ波)の影響」についての記載がありますが、2018年の時点では結論を出せる段階にないということのようです。

  生体電磁環境に関する検討会 報告書案
  先進的な無線システムに関する電波防護について
  2018年2月
  先進的な無線システムに関するワーキンググループ
  https://www.soumu.go.jp/main_content/000534918.pdf
  3.1.4. 超高周波数(ミリ波、サブミリ波)の影響
「したがって現時点の見解としては一次報告書の時点と変わらず、超高周波数帯の健康影響については、現時点では結論を出せる段階にない。今後、体系的でかつ幅広い周波数帯を対象とした研究の早急な実施が望まれる。」(抜粋)

 

 安全かつ便利になるように技術が進歩するのは大歓迎です。


【参考外部リンク】
 総務省
 電波の人体に対する影響
 https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/denpa/jintai/

 Effect of radiofrequency radiation from Wi-Fi devices on mercury release from amalgam restorations
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4944481/

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