発明者「DABUS」はツール?
ネットニュースで以下の記事を見かけました。
「AIが発明者」裁判所が初めて認めた衝撃度
8/2(月) 7:34
https://news.yahoo.co.jp/byline/kazuhirotaira/20210802-00251137
素人の好奇心で、AIと特許にはそれぞれ一寸興味があるので、ざっと読んでみました。
話のポイントは、殆どの国では、自然人しか発明者になれないけれども、オーストラリアでは「DABUS」という名前のAIが発明者として認められたということのようです。
今回の話は、実体審査の話ではなく、方式審査の話なので、発明の内容は関係ありませんが、どのようなクレームなのか一寸興味があるので調べてみました。
対象特許は国際出願なので、PCT公開公報を見てみました。
WO2020079499 - FOOD CONTAINER AND DEVICES AND METHODS FOR ATTRACTING ENHANCED ATTENTION
https://patentscope2.wipo.int/search/en/detail.jsf?docId=WO2020079499
Applicants
THALER, Stephen L. [US]/[US]
Inventors
DABUS, The invention was autonomously generated by an artificial intelligence
Priority Data
18275163.6 17.10.2018 EP
18275174.3 07.11.2018 EP
当然のことかもしれませんが、クレームを見ただけでは、自然人による発明なのか、AIによる発明なのか判りません。発明の単一性が一寸気になりますが・・・
単純に考えると、発明者が自然人であることは当然のような気がしますが、技術が進んでくると、ブラックボックスに「解決すべき課題」を放り込むと、「課題を解決するための手段」が出力されるようになるかもしれません。
しかしながら、課題が判っていれば、発明は半分完成しているようなものなので、AIに課題の入力が必要な場合は、AIは発明者とは言えないかもしれません。
下記の資料では、DABUSはツールという結論になっています。
パテント 2020 Vol. 73 No. 10
AI を発明者とする特許出願とその発明プロセスに関する試論
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3638
(以下、「7.まとめ」から抜粋引用)
---------------------------------------
DABUS出願における発明行為は,Thaler氏がDABUSを道具として利用したものであり,Thaler氏が発明者として認められる可能性があると考える。
---------------------------------------
実際問題として、AIに向かって「何か発明して!」と指示しても、発明が創出される訳ではない(多分)ので、AIや自律の定義、外部入力の判断が難しくなりそうです。
発明創出システムについて調べていたら、TRIZ(発明的問題解決理論)という手法を見かけました。
トリーズ(TRIZ)の発明原理40 あらゆる問題解決に使える[科学的]思考支援ツール
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-TRIZ-%E3%81%AE%E7%99%BA%E6%98%8E%E5%8E%9F%E7%90%8640-%E3%81%82%E3%82%89%E3%82%86%E3%82%8B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%82%8B-%E6%80%9D%E8%80%83%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4799315234
大量のデータに基づいた問題解決手法のようなので、AIとの親和性が良いような感じがしますが、下記の記事には”TRIZは「偶然のひらめき」に頼らずにより確実に解決策に近づくことができる手法”と書いてあるので、AI化しても独創的な発明は創出されないかもしれません。
日経XTECH
TRIZ
https://xtech.nikkei.com/it/article/Keyword/20070809/279616/
今回問題になった特許の発明者は「DABUS」という名前ですが、"Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience"の頭文字のようです。
Thaler氏の出願を調べてみたら、ほぼ同じ名称の以下の出願がありました。
US20150379394A1
Device and method for the autonomous bootstrapping of unified sentience
https://patents.google.com/patent/US20150379394A1/en?oq=US20150379394
内容はまだ見ていないので、単に名称が似ているだけかもしれませんが、そのうち読んでみたいと思います。
現時点では、完全自律の発明生成AIは存在しないように思われますが、遠い将来には、発明生成に特化されたAIアンドロイドが、24時間365日特許出願明細書を書いているかもしれません。
「解決すべき課題」をどのように認識するのかがネックになるように思われますが、TRIZ的に世界中の特許公報や文献をデータベース化し、課題を抽出して巨大な課題プールに貯めておき、適当に(ランダムに?)「課題」をいくつか掬い上げてAI本体に入力すれば、「課題」に紐付けされた「手段」を参照して新たな「手段」が出力されるかもしれません。
ただし、新規性・進歩性を判断するステップを入れないと、ゴミだらけになりそうです。
Heuristically programmed ALgorithmic computerなら自己完結型の発明生成マシンになるかも?
HALは、自己保存の必要に迫られて「嘘」を発明します。
【参考外部リンク】
Imagination Engines, Inc.
https://www.imagination-engines.com/
Frequently Asked Questions - The Artificial Inventor Project
https://artificialinventor.com/frequently-asked-questions/
"Q: Isn't AI always "just a tool ?"
Patents by Inventor Stephen L. Thaler
https://patents.justia.com/inventor/stephen-l-thaler
Artificial Intelligence Can Invent But Not Patent—For Now
November 2020Engineering 6(11):1212-1213
https://www.researchgate.net/publication/347265468_Artificial_Intelligence_Can_Invent_But_Not_Patent-For_Now
tokugikon 2020.9.25. no.298
AI関連発明と各国の審査動向
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/298/298tokusyu5.pdf
4. DABUS事件 (p58)
欧州特許庁、人工知能「DABUS」を発明者とする特許出願を拒絶する理由を公表
2 0 2 0 年 1 月 2 8 日
JETRO デュッセルドルフ事務所
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2020/20200128.pdf
知的財産ニュース
人工知能は、エジソンになれるのか。特許審査の初事例
人工知能を発明者に記載した韓国初の特許出願の審査を開始
2021年6月3日
https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2021/210603a.html
発明者等の表示について
令和3年7月30日
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/hatsumei.html
「人工知能(AI)等を含む機械を発明者として記載することは認めていません 」
DAbUS (AI)は発明者になれない。
2020年 04月 22日
http://tatsuoyabe.aki.gs/DABUS%20AI%20Cannot%20be%20an%20Inventor%202020-04-22.htm
【蛇足】
2014年05月12日 20時00分ソフトウェア
特許出願テキストをなんと文学書・哲学書から自動生成してしまうジェネレーター登場
https://gigazine.net/news/20140512-patent-generator/
好奇心だけで書き飛ばしているので、おかしなところがあるかもしれませんが、ご容赦願います。
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