DVB-T+DAB+FMチューナで1090MHzの微弱信号を発生させてみました(FSK Ver.)
DVB-T+DAB+FMチューナ(R820T+RTL2832U)を利用(流用)した1090MHzの微弱信号発生ネタの続きです。
隣接していれば二つのチューナのアンテナ端子間を同軸ケーブルで直接直結しなくても、1090MHzの漏洩信号を受信できたので、どの程度離れて受信できるのか試してみました。
なお、受信しているのは局発信号(受信周波数+中間周波数)そのものではなくて、局発信号の4倍の周波数で発振しているVCOからの漏洩信号です。
VCOからの漏洩信号は局発信号の漏洩信号よりは強いですが、強いといっても高が知れています。
漏洩信号のレベル高くするための何らかの手段を講じたいところですが、下手にチューナの回路に手を加えると、「免許を要しない無線局」の範囲を逸脱する可能性があります。
微弱無線局の規定
http://www.tele.soumu.go.jp/j/ref/material/rule/
電波法施行規則
第六条(免許を要しない無線局)
第1項
http://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/72002000001.html#j6_k1
「無線局の無線設備から三メートルの距離において」、周波数帯が「三二二MHzを超え一〇GHz以下」では、 電界強度が「毎メートル三五マイクロボルト」以下となっています。
322.0MHzでは500μV/mですが、322.1MHzでは35μV/mと急に厳しくなります。
1090MHzの場合には、35μV/mとなります。
35μV/mと言われても、どの程度のものかなのかよくわかりません。
70~80MHzのワイヤレスマイクやFMトランスミッタを使用した経験から判断すると、到達距離は数mという印象があります。
FM放送帯域では上限が500μV/mですが1090MHzでは35μV/mなので、約1/14の強さになります。
電界強度は距離の二乗に反比例するようなので、35μV/mの場合は到達距離は非常に短くなりそうです。
実測すれば話は簡単ですが、電界強度は素人無銭家では実質的に測定不可能です。
TELECで微弱無線設備の一般試験を行えば試験成績書を発行してもらえるようですが・・・
TELEC
微弱無線設備
http://www.telec.or.jp/services/examination/weak_radio_equipment.html
電界強度の測定は一寸難しいようなので、空中線電力ではどの程度になるのか調べてみました。
関係がありそうな情報がありました。
微弱トランスミッタの可能性を探る - エレキジャック
http://www.eleki-jack.com/archives/images/Elc02_030~031_toku1~AP.pdf
この資料には以下のような記載があります。周波数は1200MHz帯です。
「送信側に使うアンテナを標準的な無指向性を使用する前提で計算を行いました.結果は,送信機出力は0.00000000035W=350pW=-64.56dBmとなりました.」
NICT
広域電波強度分布測定技術の研究開発 http://www2.nict.go.jp/aeri/sts/stmg/ivstdc/siryou/2007/Vcon2007/VLBI_Symposium2007_Koyama_2.pdf
この資料には以下のような記載があります。周波数は8GHz帯のようです。(322MHz<8GHz≦10GHz)
「3mの距離で、電界強度が35μV/m以下(300MHz~=半波長ダイポールアンテナ(利得2.15dBi)で送信する場合の送信電力に換算して-66.4dBm (0.23nW) 以下」
両方の資料で数値は若干異なりますが、いずれにしてもピコワット、ナノワットのオーダーの気が遠くなるような小さな値です。
話はRTLチューナに戻りますが、R820TのデータシートのTable 1-2 : Electrical AC Parametersには、Multiple Crystal Frequency Spurious (Refer to RF-In) -120dBmと書いてあります。
R820T Datasheet
http://superkuh.com/gnuradio/R820T_datasheet-Non_R-20111130_unlocked.pdf
このSpuriousの中にVCOの出力成分が含まれているかどうかよくわかりませんが、かなり小さな値です。
また、R820Tのデータシートで引用されているARIB STD-B21「標準規格名 デジタル放送用受信装置(望ましい仕様) 」(第14章 受信装置各部の性能 14.3 衛星DIRD)では、「局部発振漏洩電力 入力端において-55dBm 以下」となっています。(DIRD: Digital Integrated Receiver Decoder)
ARIB STD-B21
http://www.arib.or.jp/tyosakenkyu/kikaku_hoso/hoso_std-b021.html
http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B21v5_0.pdf
スーパーヘテロダイン受信機の局発信号が電波法違反になったという話は聞いたことがないので、通常の使用状態(無改造チューナに付属アンテナを接続して動作させる)であれば問題はないであろうということで、試してみました。
なお、テレビの局発信号を外部から傍受して受信チャンネルを判別する装置もあるようなので、近ければ検出可能かもしれません。
実験条件は以下の通りです。
漏洩局発信号送信用受信機
アンテナ:付属ホイップ
チューナ:DVB-T+DAB+FM(R820T+RTL2832U)-無改造
Androidタブレット:Nexus 7
SDRアプリ:SDR Touch(v2.3)
選局モード:オートスキャン(268.930MHz/268.932MHz)擬似FSK
漏洩局発信号受信用受信機
チューナ:DVB-T+DAB+FM(R820T+RTL2832U)
Androidタブレット:Hyundai T7
SDRアプリ:RF Analyzer(v1.12)
復調モード:USB(Upper Side Band)
実験結果は以下の通りです。
【RTLチューナによる1090MHz FSK微弱信号送信実験 】
1~2mの範囲であればどうにか受信できました。
電界強度が35μV/m@3m以下かどうかは確認できませんが、多分大丈夫でしょう。
実際にアンテナの調整に役に立つかどうかは不明ですが、そのうちにヘンテナを作る予定なので、そのときに試してみたいと思います。
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